日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-04] 地球惑星科学における高速過程を捉える

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 103 (1F)

コンビーナ:芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、丹下 慶範(高輝度光科学研究センター)、座長:芳野 極(岡山大学)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター)、丹下 慶範

16:45 〜 16:58

[U04-12] 大容量プレスを活用した動的地球科学研究の開拓:特に液体の高圧放射光X線実験について

★招待講演

*河野 義生1 (1.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:高圧、マグマ、放射光X線

大容量高圧プレスを用いた高圧実験と組み合わせた放射光X線測定は、地球内部科学研究における最も有用な手法の一つであり、これまで高圧高温条件下における鉱物の相転移、結晶構造、状態方程式、弾性波速度の測定などにより、地球深部の鉱物相や化学組成などの‘静的’な地球内部構造が解明されてきた。一方、地球内部におけるマントル対流やプレートの沈み込み、それに伴う岩石の変形・破壊、また岩石の溶融や生成したマグマの輸送、初期地球のマグマオーシャンにおける液体地球のダイナミクスなど、数多くの‘動的’な地球科学現象を理解することが、地球内部のダイナミクスを解明する上で重要な課題として残されている。特に、岩石の破壊による地震発生現象やマグマの上昇による火山の噴火など、地球内部に端を発する自然災害のメカニズムの物質科学的理解は、地球内部科学のみでなく、社会的にも重要な課題である。このような‘動的’地球科学現象を理解するためには、これまで行われてきた‘静的’な高圧実験とは異なる ‘動的’な高圧実験研究の開拓が必要である。
 本発表では、特に液体の高圧放射光X線実験による高圧マグマ研究の開拓について紹介する。マグマは高圧条件下で生成する高圧物質であり、高圧下におけるマグマなどの‘液体’の構造、物性の理解は、地球内部のマグマ活動やそれに関連した地球内部の熱輸送、化学的進化を議論する上で重要な課題である。特に、高圧下におけるマグマの構造変化は、地球内部における鉱物の相転移同様に、最も基礎的で重要な情報であるが、'固体'の高圧実験と比べて'液体'の高圧実験は、実験の困難さによりあまり行われていないのが現状である。最近、我々はアメリカの放射光X線施設Advanced Photon Source (APS)の16-BM-Bビームラインにおいて、液体の構造、物性測定技術の開発を精力的に行ってきた(例えば、Kono et al., 2014, Nature Communications, 5, 5091;Kono et al., 2014, Phys. Earth Planet. Inter., 228, 269-280)。その結果、高圧下においてケイ酸塩メルトは一気圧下と大きく異なる構造を持つことが明らかになり、高圧下におけるケイ酸塩メルトの構造変化がケイ酸塩メルトの密度や粘性に大きく影響を与えることが分かってきた(例えば、Wang et al., 2014, Nature Communications, 5, 3241)。このような高圧下におけるケイ酸塩メルトの構造変化とそれに伴う物性変化は、地球内部におけるマグマの輸送過程などに大きな影響を与え、地球内部のマグマの状態とその輸送を理解する上で非常に重要であると考えられる。本発表では、高圧放射光X線実験による高圧下におけるマグマの構造、物性測定について紹介し、高圧マグマ実験研究の現状と将来の新しい高圧放射光X線実験へ向けた課題を議論する。