日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] 口頭発表

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[U-05] 地球惑星科学の進むべき道9:大型研究計画とマスタープラン2020

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 101 (1F)

コンビーナ:田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、春山 成子(三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)、藤井 良一(情報?システム研究機構)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)、座長:春山 成子川幡 穂高

11:54 〜 12:15

[U05-06] 極域科学の新展開:氷床変動に起因する海水準上昇予測のための拠点観測

★招待講演

*中村 卓司1杉山 慎2阿部 彩子3青木 輝夫4野木 義史1田村 岳史1 (1.国立極地研究所、2.北海道大学低温科学研究所、3.東京大学大気海洋研究所、4.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:極域科学、北極、南極、海水準変動、氷床

北極域は地球温暖化による平均気温の上昇が最も大きく、気候変動による影響が最も顕著に現れ、生態系や地域住民の生活に影響を及ぼしており、さらには世界全体の経済活動を変化させる可能性がある。一方、南極域では地球温暖化に対する巨大な氷床の応答も未だ不明な点が大きいなど、大規模な地球規模変動の可能性とその予測が大きな関心となっている。また、これらの両極の変化は独立でなく、海洋・大気循環を通じて連鎖していることから、両極をひとつのシステムとして捕らえることが必要となる。これらに留まらず、南極・北極は、様々な宇宙惑星科学、大気水圏科学、固体地球科学の最適な観測・調査フィールドとなっており、まさに地球惑星科学の窓となる重要な研究領域となっている。

とくに地球上の氷の約9%を占める北極グリーンランドの氷床は、北極域の急激な温暖化とともに氷床質量の減少が顕在化しており、海面上昇への影響が加速度的に増大している。一方、グリーンランド氷床より一桁質量の大きな南極氷床においても、西南極で質量減少が増大しており、氷床質量が大きい東南極までこの傾向が拡大すると海面上昇への寄与は絶望的に大きくなる。すなわち、南北両極で合計で海面を60m以上上昇させる総量を有する氷床の動向を的確に把握し、監視することは喫緊の課題となっている。

本提案では、氷床変動と海水準上昇にターゲットを絞り、南極大陸およびグリーンランドを対象として、新たな技術開発により移動観測拠点を展開し無人・遠隔技術を活用した観測を実施して、現場観測・試料分析・衛星観測・数値モデル等を統合することで、現在と過去の氷床・海洋の変動を明らかし、今世紀中にも急速に進むことが危惧される海水準上昇の予測を改善していくことを目指す。