日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] 口頭発表

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[U-06] 100周年を迎えるIUGGへの日本の貢献

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (2F)

コンビーナ:中田 節也(研究開発法人 防災科学技術研究所)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、東 久美子(国立極地研究所)、座長:東 久美子(国立極地研究所)、中田 節也(防災科研)

09:20 〜 09:40

[U06-02] IUGGと日本:過去、現在とこれからの方向

★招待講演

*河野 長1 (1.東京工業大学)

キーワード:IUGG、国際協力、今後の方向

国際測地学地球物理学連合(IUGG)は1919年に創立、1922年に第1回の総会を開催した。以来これまで100年の歴史を刻んだわけだが、日本は9か国存在する創立以来の加盟国の一つである。創立時に日本を代表して出席したのは田中館愛橘東大教授で、彼は初代のIUGG Vice-Presidentにも選ばれている(1919-1922)。以来、戦後の一時期は敗戦国として総会に参加できない期間があったが、それを除けば日本は常にIUGGの強力なサポーターであったと思う。

戦後の冷戦の時代には、東西の科学者が一堂に会する機会は非常に限られており、そういう中でIUGGなどの国際科学組織は極めて重要な役割を担っていた。特に1957-58年に実施された国際地球観測年(IGY)は共同観測事業やデータ交換などを通じて、地球規模の諸現象を解明するために各国が協力した、きわめて意義の大きいものであった。日本もロケット観測など最新の技術を用いて国際計画に参加したが、中でも南極観測を各国の同意を得て開始したことは、日本の国際社会への復帰を印象付けるものであった。

以来数十年がたったが、この間IUGGの地位の低下が著しい。IUGGの総会は4年に1度で参加者は3000-4000人程度であるが、AGUのFall Meetingは毎年開催され、近年では3万人程度の参加者を集め、学問的レベルも極めて高い。AGUばかりでなくEGUやIpGUなどもそれぞれ1万人以上の参加者があり、いずれも引用度数の多い雑誌も抱えており、今や学問の面ではIUGGが競うことは無理のように思われる。

こうした中で、IUGGのような国際組織はどのような方向を目指すべきだろうか。一つの方向は一国ないし一地域だけでは取り扱いが不可能な地球全体の問題に取り組むことであろう。例えば地球温暖化の問題などはこのカテゴリーに入るであろう。現在この問題に対応する国際科学組織はIPCCであるが、そこに参加している科学者たちはIUGGのいくつかの協会(IAMAS, IAPSO, IAHSなど)にも関係を持っている。もう一つは科学的に重要であるが、一国の中で考えると関係する研究者が少なく適切な組織が存在しない場合である。この例としてはSEDIを挙げることが出来よう。これは核など地球深部に関する研究者が地震学、地球電磁気学などの分野を越えて集まる場を提供しており、分野横断型であることも学問的成果を上げるのに貢献している。