日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] 口頭発表

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[U-07] 連合の環境・災害への対応─予期せぬ地質災害の衝撃に備える─

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:奥村 晃史(広島大学大学院文学研究科)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、川畑 大作(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、松島 政貴(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:川畑 大作奥村 晃史(広島大学)

10:45 〜 10:55

[U07-01] 予期せぬ地質災害の衝撃を緩和する自然災害環境と景観の理解

*奥村 晃史1 (1.広島大学大学院文学研究科)

キーワード:地震地体構造、地質、地形

地震や火山噴火による災害が起きるたびに,研究者の胸に繰り返し湧きあがる問いは,私たちはその災害について何を知っていたのか,そして何を知らなかったか,という問いではないだろうか.そして,たとえ不完全であったとしても,その知識をなぜ被害軽減に生かせなかったのか,という思いである.2018年に大きな衝撃を引き起こした地震の一つ,6月18日大阪府北部地震は有馬-高槻断層帯,生駒断層帯,上町断層帯の会合部近くで発生した.これら3つの断層は多くの不確かさを残しながらも,活動史が解明され将来予測も行われていた.また,震源を特定できない地震の発生は活断層とは別に予測評価をされている.さらに,震源断層の主部の活動がない場合でも,断層末端付近や他の断層との会合部付近にやや小さな地震が起きることは希ではない.人口と産業の集積によって災害への暴露と脆弱性が著しく高まっている大都市の直下型地震への備えるために,われわれが蓄積した知識を効果的に,多くのチャネルを通じて市民に伝えていく必要がある.淀川沿いに広がる低地は地震動を増幅する軟弱な地盤を示し,低地から急にそびえる生駒山地や六甲山地の急斜面は山地を隆起させる断層の存在を示している.日ごと目にする自然環境の中に地震災害のリスクを見て,被害を考えることは災害に対する備えの第一歩となるはずである.一方,9月6日胆振東部地震の震源域は,断層地塁山地と構造盆地が入り組む近畿地方とは異なり,急峻な山地もなく,起伏の小さななだらかな地形から断層運動や斜面災害を想像することは難しい.しかし9月の地震を起こした大地の動きを知らせてくれるのは,震央付近から日高海岸にかけて広がる広々とした海岸段丘の隆起であり,新第三系が作るなだらかな丘陵そのものである.日高地方・胆振東部の海岸線は広域に隆起する一方で,石狩低地帯とその南方延長には沈降域が広がっている.このコントラストは新第三紀末から第四紀の衝突テクトニクスによって形成された.このテクトニクスは現在まで継続していることが推定され,石狩低地帯東縁断層帯の活動も解明が進んでいた.胆振東部の自然景観を地震災害と結び作ることは容易ではないし,大きな被害をもたらした土砂災害を地形から予測することも困難であった.しかし,限られた知識をリスクの認識につなげて災害予測と被害軽減をはかることは重要な課題である.