日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-07] 連合の環境・災害への対応─予期せぬ地質災害の衝撃に備える─

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:奥村 晃史(広島大学大学院文学研究科)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、川畑 大作(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、松島 政貴(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:川畑 大作奥村 晃史(広島大学)

11:10 〜 11:25

[U07-03] 学会行事開催時の非常変災への対応 〜日本地質学会年会における事例〜

*松田 博貴1,2 (1.熊本大学、2.日本地質学会)

キーワード:非常変災対応、台風、地震、日本地質学会

近年,台風やゲリラ豪雨による風水害,また予期せぬ地震による地震災害など,多くの自然災害が発生している.日本地質学会では,このような自然災害に対して,地質学の観点からメカニズムや防災・減災に関する学術研究,ならびに社会への教育・啓蒙活動を推進している.また学会行事中の非常変災では,参加者の安全確保と共に秩序立った運営に留意している.しかし実際には,現場での適切な対応が難しい場合もある.本講演では,この数年の学会行事中の非常変災とその対応・課題について紹介し,今後の皆様の一助になればと考える.
日本地質学会は,例年9月開催の学術大会(3日間)において,一般講演・公開シンポジウム・市民講演会を実施すると共に野外巡検・地質情報展などを行い,会員に加え,児童・生徒,市民の皆様の参加をいただいている.この時期は台風シーズンにあり,これまでも悪天候に見舞われたことがあった.特に第120年学術大会(仙台大会;2013年9月14〜16日)では,大会最終日に18号台風が東北地方を直撃し,市民講演会は風雨の中での開催,また交通機関の乱れにより学会参加者の帰路に影響が出た.これを受け,学会では2014年7月に「一般公開行事実施の際の警報等発令時及び地震発生時の対応指針」を,さらに2016年1月には「日本地質学会学術大会に関する緊急時対応」を策定したところであった.
第124年学術大会(愛媛大会;2017年9月16〜18日)
状況:本大会では,18号台風が四国地方を直撃した.九州南部に上陸した18号台風は,大会2日目17日に四国を横断した後,近畿地方を通過し,18日未明に日本海へと抜けた.
対応: 大会初日(16日),台風接近を受け,行事委員長ほか執行部で協議し,開催校愛媛大学の規則に則り,松山市に暴風警報が発令された場合には大会の一部を中止することとした.16日13時に17日の大会実施の決定時期についてML・HPにより配信し,17日7時に午前の中止を,そして9時30分に17日全行事の中止を発表した.17日発表予定であった学生・院生の口頭発表については,希望者分について18日午前中に特別セッションとして開催した.また中止となった講演の要旨は,今回に限りとして希望者には「台風によりプログラム中止」と明記の上,J-STAGEに公開し引用可能とした.
第125年学術大会(札幌大会;2018年9月5〜7日)
<21号台風>
状況:21号台風は,大会前日9月4日午前中に関西地方に大きな被害を与えながら通過し,その後,日本海を北上,4日深夜,北海道西岸に達した.4日昼から関西・関東方面の航空便を中心に,交通機関に大きな乱れが生じた.
対応:大会前日,執行部で協議し,大会初日には台風は通過後と判断し,大会実施を予定した.大会初日,会場周辺に被害がないことを確認の上,予定通り大会を開催した(5日午前9時配信).なお交通機関の乱れによる講演キャンセルについては「緊急時対応」に則り,講演発表取り消しとして扱った.
<「平成30年北海道胆振東部地震」>
状況:大会2日目未明(6日午前3時8分),「平成30年北海道胆振東部地震」(M=6.7,最大震度7)が発生し,札幌市内でも震度6弱を観測した.道内全域で大規模停電が発生し,交通機関のほぼすべてが停止し,それは大会3日目まで続いた.
対応:発災直後に執行部に非常呼集がかけられ,6時過ぎに対応を協議した.情報不足の上,復旧目処が不明の中,午前8時に大会2日目プログラム中止を配信した.しかしポスター発表の学生の一部が参集したため,ポスター発表については実施することとした.大会3日目には,一部通電したものの会場の停電は継続中であり,また交通機関・商業施設の再開の目処が立たないため,すべてのプログラム中止を決定した(7日午前6時30分配信).中止となった講演の要旨については,愛媛大会に準拠した.
<「つくば特別大会(12月1〜2日)」>
状況: 2年連続して大会の一部が中止になったことにより,講演中止を余儀なくされた参加者から何らかの対応の声が寄せられた.
対応:学会終了後,直ちに執行部で協議をし,代替大会開催を模索した.9月13日には会員に「代替大会開催についての緊急アンケート」を実施すると共に,代替会場・日程について協議した.その結果,「つくば特別大会」の実施を決定し,10月1日,会員に周知した.特別大会には,300名を超える参加者を得ることができ,代替大会の役目を果たした.
上述のように,台風のように事前に予測ができる場合には万全の対応はとれるが,地震などの場合,「緊急時対応」にはない判断が求められる.また情報伝達法,ならびに参加者の権利や公平性の配慮も必要となる.これらが今後の検討課題である.