日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] 口頭発表

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[U-08] 日本地球惑星科学連合の将来に向けた大会参加者からの意見と提言

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 101 (1F)

コンビーナ:浜野 洋三(神戸大学海洋底探査センター)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎(金沢大学 理工研究域 地球社会基盤学系)、座長:和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎

15:42 〜 15:54

[U08-09] 地球惑星科学と情報科学との連携 〜学際領域における共存共栄の試み〜

*出村 裕英1 (1.公立大学法人会津大学)

キーワード:地球惑星科学、情報科学、学際領域

地球惑星科学が学際領域科学であることは、地球惑星科学連合が「宇宙惑星科学」「大気水圏科学」「地球人間圏科学」「固体地球科学」「地球生命科学」で構成されていることから誰もが認めるものである。本連合に所属する者は、連合傘下ないしそれ以外の学会にも複数所属し、目的を同じくする学会や手法を同じくする学会でそれぞれ横断的に活動している例が多い。一方、日本学術会議をはじめ学問分野や大学および研究機関は、リソースの争奪局面においてどうしても縦割りになりがちであり、必ずしも地球惑星科学連合に閉じた範囲で調整できない困難な場面も現場では生じている。それどころか、地球惑星科学の中でも情勢を俯瞰的に見られなくなって、連合としての一体感が希薄化しているのではないかという危うさすら感じられる。ここでは、ICT教育に特化してスーパーグローバル大学に採択された会津大学を例にとって、いかにして地球惑星科学の研究と情報科学の教育研究とを連携して行なっているかを紹介し、地球惑星科学と情報科学ひいては学際領域としての地球惑星科学が共存共栄しつつ発展する道について議論したい。
1993年に開学したまだ若い会津大学はICTに特化したコンピュータ理工学部のみで、単科大学という色彩が強かった。しかし、情報科学周辺分野と連携し基礎研究だけでない応用先を開拓するため、出口重視の先端情報科学研究センターを2009年に設置した。そのセンターの下部組織である宇宙情報科学クラスターは、フロンティア分野で大型研究のひとつと位置付けられる宇宙開発/深宇宙探査への長期的な参画、ソフトウエアとデータを一体で研究者コミュニティに提供することでオープンデータに新たな価値を与えるアーカイブサイエンスの実践、この2つを旗印にしている。発足後10年が経過した今では、はやぶさ2およびそのほかのJAXAミッションに関わるだけでなく、気象庁噴火予知連絡会の衛星解析グループの一員として福島県下の火山防災活動にも寄与している。地方大学は研究のみならず地域貢献活動としての産学連携や防災減災に取り組む側面が無視し得ないことの好例であり、また学際的であるがゆえに様々な分野と連携する糸口を見つけやすいことも意味している。なかなか論文業績にはなりにくい長期的かつ探索的な活動となりがちで、連携する成熟分野から見ると中途半端にしか見えないと思われるが、未成熟で試行錯誤の余地が大きくイノベーションを引き起こしやすい典型的な境界領域でもある。地球惑星科学を様々なレベルで粗視化し、それぞれのレベルの境界領域にも正しく目配りして縦割りでは収まらない連携の場を確保することこそが、裾野の広い学際領域が全体で発展する鍵ではないかと考えている。研究所と大学、都市部大規模大学と地方小規模大学、ほか様々な対立軸があると思われるが、会津大学の例を踏まえて、地球惑星科学連合の未来について率直な意見交換ができれば幸いである。