JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS07] 大気化学

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

[AAS07-03] つくばにおけるCO高度分布観測による発生源の推定

*鈴木 大将1中島 英彰2,1村田 功1森野 勇2 (1.東北大学 大学院環境科学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:大気、リモートセンシング

一酸化炭素(CO)は主に化石燃料の燃焼やバイオマス燃焼, 炭化水素の酸化によって生成される. COは対流圏オゾン発生の前駆物質であるとともに,OHラジカルとの反応によって様々な大気微量成分の存在量に影響を与えるため大気化学において極めて重要な物質である.大気中での寿命は数週間~2か月程度であり濃度が全球的に均一ではなく, その存在量や発生源に地域的な偏りがあるため,より多くの地点で観測を行うことが望ましい.特に, 近年COの全球的な濃度変化に大きな影響を与えているアジア地域ではより正確な変動の理解が必要であり,日本での観測はアジア地域のCOの理解に貢献できる.つくば(36.05°N, 140.12°E)では, 高分解能フーリエ変換赤外分光計(FTIR)による大気微量成分の観測を行っている.FTIRはその高波数分解能(0.0035cm-1)を生かし,観測した吸収スペクトルの線形から存在量の高度分布のリトリーバルが可能である.本研究では,つくば上空のCOの発生源および季節変動を明らかにすることを目的として,COおよびシアン化水素(HCN)の高度分布を用いたCO発生源の解析を行った.大気中のHCNは数年程度の寿命を持ち、主にバイオマス燃焼によって生成される.解析においてHCNをバイオマス燃焼のトレーサーとして使用した.

2010年4月-2019年5月の期間について,つくばのFTIR観測スペクトルによるCOおよびHCNの高度分布の導出を行った. 解析にはロジャーズの最適推定法(Rodgers, 2000)を基に開発されたインバージョン解析プログラム<SFIT4>を使用した.
リトリーバルで得られたCOの高度分布ついて高度0-5km, 5-18kmの二層に分解し,同じ日時,高度に対応するHCN気柱全量との相関解析を行った.解析の結果, 秋季のCOとHCNの気中全量において, 高度5-18kmにおける間に有意な相関関係が確認された, また高度0-5kmにおいて相関関係が認められなかった.相関解析から得られたCO/HCN比から,高度5-18km秋季の気柱全量について,大気中のCO全存在量におけるバイオマス燃焼起源COの存在量の割合を求めた.高度5-18kmの9-11月においてバイオマス燃焼起源のCOの割合は平均で52%となった.この結果から,つくばにおける秋季のCOにおいて上部対流圏および成層圏では遠方の森林火災等によるバイオマス燃焼起源のCOが卓越しており,それより低い高度ではバイオマス燃焼起源のCOに加えて,つくば周辺の都市大気に含まれる化石燃料の燃焼を起源とするCOが混在しているため上層と比べてバイオマス燃焼起源のCOの寄与が小さくなると考察する.