JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 成層圏―対流圏相互作用

コンビーナ:坂崎 貴俊(京都大学 大学院理学研究科)、木下 武也(海洋研究開発機構)、Pu Lin(Princeton University/NOAA Geophysical Fluid Dynamics Laboratory)、Peter Hitchcock(Cornell University)

[AAS08-P08] 熱帯海岸起源非停滞重力波による準二年振動定在化のパラメタリゼイション

*山中 大学1 (1.総合地球環境学研究所/神戸大学名誉教授)

キーワード:日周期海陸風循環、内部重力波、波動平均流相互作用、準二年周期振動

赤道域対流圏内における雲や降雨の生成では日周期が最も卓越し,特にインドネシア海大陸(IMC)の大島嶼周囲の世界最長の海岸線沿いで顕著である.線形論では海岸沿いの日周期(いわゆる海陸風)循環は波動の重畳で与えられ,その分散関係は鉛直波数の二乗m2の三次方程式となる. 強い渦粘性・拡散(m6の項)が浮力(m0の項)と釣り合う地上付近では,速度場は定常な水平対流循環セルと殆ど同じで,その強さや水平スケール(水平波数の逆数k–1)は海陸間温度差kΔTで決まる.この循環より上方では,粘性・拡散は弱まり,加速度(m2の項)が浮力と釣り合い,上方および下方に伝播する重力波の重畳となる.kΔTが昼夜(周波数ω = 2π/1日)で逆転するのに対応して,水平位相速度 c = ω/kは陸向きおよび海向きとなる.実際このような波が百km程度より大きな大島嶼の海岸線に沿って観測されている.それらは個々の雲対流が励起する波より大規模でかつゆっくり(c ≃ 1–3×102 km/10 h ≃ 3–7 m/s)したものであるが,季節内変動(Kelvin波や混合Rossby重力波)よりは明らかに小規模である.

高度が高くなるにつれて,重力波のうち上方伝播成分が密度減少を補償して増幅する.海岸線は閉曲線なので,あらゆる方向のcをもつ波が存在する.しかし南北方向のcをもつ波はHadley 南北循環によって(赤道沿いの水平無風地帯つまりITCZを除き)上方伝播できなくなる. 季節内変動(Madden-Julian振動)は東西(Walker的)循環を伴っているが,普通は海大陸(あるいは阿・南米両大陸)に上陸する前に弱まってしまう.従って東西両方向のcをもつ波が対流圏界面を越えて上方に伝わり,これはPlumb (1977)が考えた二つの異なる東西方向(同じ大きさだが逆向き)のcがある状況によく似ている.(cが東西どちらか向きの波の)風速振幅|u|が増幅して,平均風Uに相対的な位相速度の大きさ|c - U|に達すると,砕波が起こりUが(cによって東西どちらか向きに)加速され,これはLindzen (1981)以来の中層大気力学で定式化された通りである.このように熱帯海岸で毎日放出されるcが東西方向の重力波が中層大気循環と相互作用することで,成層圏QBOが定在化することになる.波の振幅|u|や加速(QBOの周期や振幅)を決めるkΔTは,海水温経年変動やそれよりずっと長期間スケールの陸地の変化に依存して変化する.