[A-AS08] 成層圏―対流圏相互作用

[AAS08-P13] 北半球冬季中層大気における移動性プラネタリー波

*岩尾 航希¹、廣岡 俊彦² (1.熊本高等専門学校、2.九州大学大学院理学研究員)

キーワード：プラネタリー波、成層圏突然昇温、成層圏、中間圏

成層圏では，子午面循環は主に対流圏から上方に伝播した準定常的なプラネタリー波が消失することによって駆動されるのに対して，中間圏では主に重力波によって駆動されることがよく知られている。一方，最近の研究では，成層圏や中間圏において，移動性のプラネタリー波がその生成や消失を通して平均風に大きな影響を及ぼしていることが分かってきた。しかし，この領域における観測はまだ不十分なため，その詳細は分かっていない。
そこで本研究では，SABERの衛星データを用いて，プラネタリー波(PW)が活発な北半球冬季の成層圏・中間圏における，PW波の平均風に対する寄与を調べた。その結果，月平均の定常波(STPW)による東風加速と，それからの残差から計算した移動波(TRPW)による西風加速の間で，極域下部成層圏において打ち消しあうメカニズムがあることが分かった。中間圏に東風が現れたとき，STPWは東風領域を伝播できないので下部中間圏で消失して東風を加速するのに対して，TRPWは，東風によりもたらされる順圧もしくは傾圧不安定により下部中間圏で生成されて，西風を加速する。このメカニズムにより，中間圏の東風は10日以上にわたり維持されることがある。また，極域下部成層圏で生成されるこの波は，東西波数１，周期約20日で東進し，下方に伝播するTRPWであった。さらに，中間圏の東風は，下層から伝播するSTPWの消失に加えて，成層圏突然昇温の回復期に成層圏で発達したTRPWが中間圏で消失することで，しばしば引き起こされることが分かった。