JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS15] ミクロスケール気象の稠密観測・数値モデリングの新展開

コンビーナ:伊藤 純至(東京大学大気海洋研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、松田 景吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

[AAS15-02] 数値シミュレーションのよる街路毎の熱環境解析

*杉山 徹1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門 情報エンジニアリングプログラム)

キーワード:熱環境、風環境、街区、数値シミュレーション、MSSGモデル、地球シミュレータ

本研究では、夏季の街中の暑熱環境に対する適応という視点から、暑熱環境の差を生み出す原因と結果を数値シミュレーションから考察した結果を報告する。特に、実街区形状をもとに考察することで、社会実装を目指した研究結果である。
都市街区の日中は、夏季のヒートアイランド現象が発生する印象から、一般的に暑熱環境が良くないとされる。実際、日射を受けた道路のアスファルト舗装面は高温となり大気を温める。一方で、高層の建物が存在する通りやブロックでは、その粗度からの混合層の発達や日射を遮る事から、気温を上げない効果も働く。このように、都市での暑熱環境は、複雑な空間分布をもって現れるため、街区内の通り毎に熱環境が著しく異なる。本研究では、通りに注目し、通り毎に異なる熱環境をもたらす原因を挙げ、その効果の結果としての熱環境をWBGTの値「積算WBGT値(degree・hour)」を数値シミュレーションから求め、評価した。用いた数値シミュレーションモデルは、海洋研究開発機構で開発されているMSSGモデルである。数値シミュレーションでは、空間解像度を5mと高度化し、その複雑な空間分布を再現できるようにした。また、計算街区として横浜みなとみらい21地区の実街区形状を対象とし、より実用的な結果が得られるように考慮した。その結果、積算WBGTの値は、空間分布のみならず、時空間においても複雑な分布が得られた。つまり、みなとみらい駅から桜木町駅へ徒歩で街路を移動する場合を例とすると、「どのルートを通り移動するか」のみならず、「いつ出発するか」によって同じルートでも大きく値が異なる。その差をもたらす主成分の1つは風速であるため、出発時刻を10分変えることでルートを変更した以上の効果が得られることもある。発表では、その積算WBGTの偏差を含め、差をもたらす主成分を報告する。