JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS15] ミクロスケール気象の稠密観測・数値モデリングの新展開

コンビーナ:伊藤 純至(東京大学大気海洋研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、松田 景吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

[AAS15-04] 気温鉛直分布の多点計測に適したラマンライダー地上校正手法に関する研究

*藤田 陽一郎1矢吹 正教1長谷川 壽一2竹内 栄治2 (1.京都大学生存圏研究所、2.英弘精機株式会社)

キーワード:ラマンライダー 、気温鉛直分布、校正手法、都市気候

気温と水蒸気の鉛直分布が計測できるリモートセンシング手法であるラマンライダーは、その多点展開により、深刻な水災害をもたらす局地豪雨や、ヒートアイランドに代表される都市気候の理解への貢献が期待されている。一方で、ラジオゾンデ等の比較による定期的な校正観測が必要となることが、都市域でラマンライダーの稠密観測を行う際の課題となってきた。本研究では、ラマンライダー校正値の経時変化を把握する、地上での運用が可能な汎用性の高い校正手法の確立を目指す。ラマンライダーによる水蒸気計測では数十nmの波長範囲に現れる水蒸気・窒素・酸素分子の振動ラマン散乱光を、気温計測ではレーザー波長の前後2~3nm内に分布する回転ラマン散乱光を検出する。両者は波長領域が異なるため、同一手法を適用することが難しい。ここでは、気温ライダーの地上校正手法について述べる。

 一般的な気温ラマンライダーは、気温依存性を示す回転ラマンスペクトルに対して2波長での強度の比から気温を求める。一方、我々のグループでは、ストークス・アンチストークス両方の純回転ラマンスペクトルを、分光器とアレイ型検出器による多波長計測から求めて気温を推定する手法を開発してきた。スペクトル形状が分かることで、レーザー波長や検出波長のズレに対するロバスト性の向上が期待できる。この特徴を活かして、本研究では、上空に射出前のレーザーの照射領域における回転ラマンスペクトルを求め、その形状の時間・温度に対する依存性から校正値を見積もる手法を提案する。まず、数値計算から、レーザー波長のゆらぎや各アレイ検出器に入射する波長領域の違い等に対する検出信号の感度実験を行った。次に、レーザー光路上に設定した微小な検出領域を温調して、温度ごとの回転ラマンスペクトルを実測する小型の校正システムを構築した。地上での校正用スペクトルの検出は、気温鉛直分布を求める大気計測と同時に行うことができる。そのため、断続的なラジオゾンデ観測との比較から校正する従来手法に比べて、高精度な気温推定が期待できるリアルタイム校正への応用が可能である。発表では、開発した地上校正装置を用いた計測の初期解析結果についても紹介する。