JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC38] アイスコアと古環境モデリング

コンビーナ:阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、植村 立(名古屋大学 環境学研究科)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、竹内 望(千葉大学)

[ACC38-P09] 最終間氷期の軌道要素に対する対流活動の変化

*千喜良 稔1山田 洋平2阿部 彩子1佐藤 正樹1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:古気候、最終間氷期、気候モデル

最終間氷期の軌道要素に対する全球非静力学大気モデルの実験を行った。モデルは海洋混合層モデルと結合されている。本研究で用いたモデルはNonhydrostatic ICosahedoral Atmospheric Model(NICAM)である。NICAMは、適切な解像度のもとでは積雲対流を解像するフレームワークであるが、利用できるコンピューター資源の関係から、本研究はNICAMを56kmの解像度で用いている。実験は、積雲スキームを使った場合と使わない場合の二種類を行い、両者を比較している。積分は5年間行っている。最終間氷期の北半球夏期の気候では、モンスーン活動の強化が起こっている。平均場の降水量の空間パターンは、積雲スキームありのケースとなしのケースで非常によく似ているが、積雲スキームを用いた方が、降水量のピーク値が抑えられる。NICAMの長所は、対流活動の絡んだ変動の表現にあるため、本研究は、特に、モデルで表現された赤道波と熱帯低気圧の振る舞いに着目した。マッデン・ジュリアン振動(MJO)は、積雲スキームを用いた方がよく表現されている。また、最終間氷期の実験において、MJOのシグナルが強まることが発見された。これは2乗コヒーレンスとラグ相関の両方で見られ、積雲スキームを使用した実験と使用しない実験の両方で見られる。モデルは、北半球夏期の季節内振動(BSISO)をあまりうまく表現していないが、ラグ相関では、BSISOも最終間氷期においてシグナルが大きくなる。特に、積雲スキームを用いた実験では、ラグ相関において、観測に匹敵するようなBSISOのパターンが得られた。熱帯低気圧の全球的な発生頻度の変化は、積雲スキームの有無で傾向が異なっている。積雲スキームなしでは減少するのに対し、積雲スキームありでは増加する傾向にある。