JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC39] 雪氷学

コンビーナ:縫村 崇行(東京電機大学)、石川 守(北海道大学)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、永井 裕人(早稲田大学 教育学部)

[ACC39-06] 札幌における光吸収性積雪不純物濃度の年々および季節変動傾向

*對馬 あかね1庭野 匡思1青木 輝夫2大河原 望1谷川 朋範1的場 澄人3足立 光司1木名瀬 健1藤田 耕史4 (1.気象庁気象研究所、2.国立極地研究所、3.北海道大学低温化学研究所、4.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:表面雪、光吸収性積雪不純物、札幌

雪氷面における放射収支は、雪氷内部に存在する元素状炭素(Elemental carbon; EC)、有機炭素(organic carbon; OC)、及び鉱物性ダストなどの光吸収性不純物に大きな影響を受ける。中でも黒色炭素(Black carbon; BC)としても知られるECは、光吸収性能が高く、近年、その気候システムへの影響に大きな注目が集まっている。積雪中の光吸収性不純物は可視域のアルベドを低下させ1) 雪氷面に太陽光が吸収されやすくなるために、融雪が促進される。雪面の融解が促進されることで雪の粒径は大きくなり、さらに近赤外域のアルベドを低下させ、正のフィードバック効果を引き起こす。したがって、吸収性積雪不純物は季節積雪域での消雪時期の変化などに重大な影響を与える2) ため、積雪表面でのそれらの動態を知ることは重要である。本研究では、北海道大学低温科学研究所にて、2007-2008シーズンから2017-2018シーズンの計11年間の積雪期に、週2回採取された表面雪(表層;0-2cmおよびそのすぐ下の層(ここでは亜表層とする);0-10, 2-10cm)に含まれるEC、OC,TC(TC=EC+OC)および総不溶性不純物(dust)の濃度の測定結果を示すとともに、化学主成分(SO42-, NO3-, Cl-, Na+, NH4+, K+, Mg2+, Ca2+) との比較から、それらの変動要因を考察する。
表層での過去11年間のEC, OC, Dust濃度はそれぞれ、0.002-1.92、0.013-12.7、および0.137-260 ppmwの範囲で大きく変動しており、中央値はそれぞれ0.143、0.301、および3.57ppmwであった。また、表層、亜表層ともに、EC, OC, dustの季節変動パターンは酷似しており、全ての成分が3月から4月の融雪時期に高い値を示すことがわかった(図1)。さらに、積雪深と雪温の変動から一冬を涵養期と融雪期に分けて、ECとOCの関係性を比較した。その結果、涵養期と融雪期では両者の回帰直線の傾きが異なることから関係性が大きく変化していることが示唆された(図2)。更に、中国における先行研究との比較を実施したところ3)融雪期特有の気象場によって中国からエアロゾルが日本周辺に供給され、札幌の積雪中のECとOCの変動に寄与した可能性があることが示唆された。
Reference;
1)Warren and Wiscombe, 1980, J. Atmos. Sci., 37, 2734-2745.
2)Niwano et al., 2012, J. Geophys. Res., 117, F03008.
3)Cao et al., 2005, Atmos. Chem. Phys., 5, 3127–3137.