JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 中緯度大気海洋相互作用

コンビーナ:釜江 陽一(筑波大学生命環境系)、遠山 勝也(気象庁気象研究所)、Hyodae Seo(Woods Hole Oceanographic Institution)、佐々木 克徳(Hokkaido University)

[ACG44-09] 中緯度の海洋下層雲量を決める安定度指標

*川合 秀明1神代 剛1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:海洋下層雲、中緯度、雲パラメタリゼーション、気候モデル

海洋下層雲量のよい指標として、従来、推定逆転層強度EIS(Wood & Bretherton 2006)が使われてきた。この指標は、700hPaと海面付近の温位から大気混合層上端の逆転層の強度を推定するもので、下層雲量と非常によい相関があることが知られている。しかし、中緯度の下層雲量はかなり多いが、EISでは、中緯度の海洋下層雲量はやや過少に評価されてしまう。一方、EISをより発展させた指標であるECTEI(Kawai et al. 2017)は中緯度で下層雲量が大きいこととよりよい対応がある(Fig. 1)。


この理由は以下のように説明できる。EISは大気下層の温度情報のみに基づいて計算されており、湿度情報は考慮されていない。これに対し、雲頂エントレインメント(下層雲を壊す働きがある)の効果を指標にしたECTEIは、温度情報だけではなく湿度情報(700hPaと海面付近の比湿を用いる)も考慮したものである。EISが亜熱帯と中緯度で仮に同じ値であったとしても、中緯度の方が海面水温が低いことと、700hPa付近の湿度が高いことにより、雲頂エントレインメントが起きにくく、中緯度の下層雲は壊されにくくなる。ECTEIはこの2つの影響により中緯度では下層雲が多いことを無理なく説明できる。


さらに、この指標ECTEIをパラメタリゼーションに利用している気候モデルMRI-ESM2は、中緯度の海洋下層雲が適切に表現され、放射バイアスも小さくなっている。これについても手短に紹介する。