JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG53] Terrestrial monitoring using new-generation geostationary satellites

コンビーナ:山本 雄平(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)、Yunyue Yu(NOAA National Environmental Satellite, Data, and Information Service)、Tomoaki Miura(Univ Hawaii)、市井 和仁(千葉大学)

[ACG53-P03] ひまわり8号を用いた東南アジアの植生季節変動モニタリング

*林 航大1市井 和仁1山本 雄平1 (1.千葉大学)

キーワード:ひまわり8号、雲マスク、熱帯林、MODIS

東南アジアには生物多様性の宝庫,炭素の貯蔵庫と呼ばれる熱帯林が広く分布する.この地域は年間を通して降雨が多いため,熱帯林は治水や正常な水循環を保つという重要な役割も担っている.そのため,東南アジアにおける陸域生態系の空間分布や構造,機能の変化をモニタリングすることは炭素,水,エネルギー収支の地球規模の変化を正確に評価するために不可欠であり,加えて,豊かな生態系や治水環境の保全にも有益な情報となる.

熱帯林は農地開拓や社会基盤整備などにより,現在も減少を続けている.熱帯林減少による二酸化炭素放出は気候変動の原因の一つである.また,異常気象などの気候の極端現象の規模と頻度も増加している.特に熱帯地域では,降雨のない時期が長期化して干ばつが発生したり,降雨量が極端に増加し洪水が起こったりしている.この異常気象により大規模な森林火災や深刻な水ストレスが発生するなど生態系の劣化が起こっている.

衛星観測は広域の植生を把握するうえで重要な観測データを提供している.東南アジアでは人間活動や気象・気候変動により,土地被覆そのものや植物季節,バイオマス量などの時空間的分布が目まぐるしく変動している.そのため,欠損のない連続的なモニタリングを行うことが重要である.

従来,大陸や国スケールなど広域の陸域植生モニタリングをする際はMODISやAVHRR,SGLIなどの中空間分解能極軌道衛星搭載のセンサデータが一般的に用いられてきた.しかしながら,これらの衛星は同一地点を昼間にはおよそ一日一回しか観測できないため,年間を通して雲が多く発生し雨季にはほとんど雲に覆われてしまう東南アジアにおいては雲の阻害を受けていないデータが一か月に一度も得られない場合がある.

2015年7月に本格的な運用を開始したひまわり8号は,搭載された可視赤外放射計(AHI; Advanced Himawari Imager)の可視,近赤外域の観測波長帯が複数となり,陸域観測への応用が期待されている.さらに,フルディスクの観測頻度が約10分であるため,従来の東南アジアでの陸域植生モニタリングに比較して高品質なデータが格段に増加すると期待されている.しかしながら,現在,東南アジアの陸域観測を対象にひまわり8号データは中分解能極軌道衛星搭載センサデータと比較して,熱帯雨林フェノロジー解析に対してどの程度の利用価値があるのかは明確化されていない.

本研究では,ひまわり8号データを東南アジアの陸域植生モニタリングに用いた場合,従来と比較して,雲なしデータがどの程度増加し,熱帯雨林のフェノロジーをどの程度詳細に理解できるかを明確化させることを目的とした.そのために,まず,ひまわり8号とMODIS雲マスクの相互検証を行い,雲検出率が同程度であることを確認した.そして,一か月間の陸域観測割合を比較し,ひまわり8号データによる雲なしデータ量の大幅な増加を確認した.また,ひまわり8号とMODISの地表面反射率データから植生指数を算出し,雲を除去した場合でのそれらの季節変化を比較した.