JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG55] 沿岸海洋⽣態系─1.⽔循環と陸海相互作⽤

コンビーナ:山田 誠(龍谷大学経済学部)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

[ACG55-02] 沿岸自噴帯地下水の湧出に関する調査結果 -UAVによる地下水湧出調査-

*宮下 雄次1濱元 栄起2 (1.神奈川県温泉地学研究所、2.埼玉県環境科学国際センター)

キーワード:UAV地下水調査、自噴帯湧水、地下水流速・流向、自噴高、大槌湾

近年、沿岸生態系における海底湧出地下水の重要性が認識されるようになり、海域における海底湧出地下水を把握するための調査などが行われるようになった。
 発表者らは、岩手県大槌町大槌湾における海底湧出地下水を把握することを目的として、陸域に存在する沿岸自噴帯湧水及び被圧地下水の湧出及び流動状況について2015年から調査を行っている。本報告では、2019年6月及び2020年1月に実施した1.自噴高調査、2.地下水流向流速調査及び3.UAVによる湧出状況調査結果について報告する。

1.自噴高調査結果
 2019年6月11日に、16地点で自噴高の測定を行った。自噴高の測定は、自噴井の孔口から湧出する地下水を、孔口に接続したチューブに導入し、チューブ内を上昇した地下水の水位を測定する方法で行った。測定した自噴高は、標高1.65~2.34mの間に分布し、大槌川に近い北部~中央部が高く、小鎚川に近い西部で低くなる傾向がみられた。また自噴井湧出量は、21自噴井で測定を行い、最大1.26(L/sec)、最少0.11(L/sec)、平均0.66(L/sec)であった。

2.地下水流向流速調査結果
 大槌自噴帯のなかで、最も河口部付近に位置している自噴井において、自噴孔内に単孔式地下水流向流速計GFD-3aを深度32mの位置に設置し、地下水の流向及び流速を測定した。大槌川および小鎚川に挟まれた大槌自噴帯では、先行研究により、大槌川及び小鎚川の河床から河川水が地下に浸透し、自噴帯の地下およそ30m付近にある被圧帯水層を流下していることが、明らかにされている。
 測定の結果、2019年6月12日10:00における深度32mにおける被圧地下水は、流速0.123cm/min、流向は159.6°であり、ほぼ大槌湾の方向を示していた。また、地形勾配からダルシー流速によって推計した透水係数は概ね0.2~0.4(cm/sec)となり、これは砂や礫による帯水層に相当ことから、被圧帯水層中の地下水流速をとらえているものとみられた。

3.UAVによる湧出状況調査結果
 大槌自噴帯湧水は、震災復興工事の進捗により湧出口の状況が大きく変化する。2020年1月には、公園整備事業による造成等により、自噴帯の東側の一部が湧水池となり、湧出状況が確認することが出なかった。そこで、地表や、地表水よりも温度が高い自噴井からの湧水を、熱赤外温度計をもちいることで、湧出地点や湧出範囲の特定を試みた。また、自噴井からの湧出は、造成地や湧水地等の中にあり、接近して測定することが不可能な場所もあることから、熱赤外カメラ搭載UAV(dji製 mavic 2 Enterprise Dual)を用いて、高度約50mから地表面温度の測定を行った。
 その結果、湧水池内の2019年6月に自噴井が確認された地点において、水温が周囲より高くなっていることが確認された。また、草藪等により、地上から接近できなかったいくつかの地点において、地表面温度が高くなっている地点が見られた。また、自噴域南側を流下している小鎚川において、自噴帯湧水域に隣接する範囲の河川水の水温が、上流側及び下流側にある河口水門付近よりも高くなっていることが観測された。