JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG55] 沿岸海洋⽣態系─1.⽔循環と陸海相互作⽤

コンビーナ:山田 誠(龍谷大学経済学部)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

[ACG55-P02] 大分県別府市における河川への温泉排水流入が河口域の底生生物に与える影響

*清水 一矢1山田 誠1上西 実1大沢 信二2 (1.龍谷大学、2.京都大学地球熱学研究施設)

キーワード:温泉排水、底生生物、沿岸域

大分県別府市は日本有数の温泉地であり、人々はその恩恵を浴用や熱利用など様々な形で受けている。また観光資源としても非常に有用であり、インバウンド等にも一役買っている。一方で利用後もしくは未利用の温泉水が周辺の河川に排出されている事例が確認されており、そのことが河川や河口域の生態系に影響を与えていることは既往研究でも明らかにされている事実である。それらの研究では魚類に関する内容は記載されているものの、底生生物に関しての調査はなされておらず、影響の程度は不明である。そこで本研究では底生生物に着目し、温泉排水がそれらにどのような影響を与えているのかを明らかにする目的で、河口域の底生生物調査を行った。
 調査は、大分県別府市を流れる主要河川のうち、温泉排水が流入している河川(平田川)と、温泉排水の流入がない河川(冷川)の非感潮域と感潮域において実施した。各地点で1m四方の範囲を10ヵ所ランダムに設定し、それらの範囲内の生物を手網を用いて採取した。その後、採取したサンプルをアルコールで固定して研究室に持ち帰り、研究対象となる底生生物(甲殻類・貝類)の種同定を行った。
 エビ類は平田川に多く見られ、特に感潮域でスジエビモドキが多く見られた。一方、カニ類は冷川に多く、特に非感潮域で多く見られた。貝類は、イシマキガイに大きな差があり、特に冷川の非感潮域で非常に多く見られた。冷川ではカワニナが、平田川ではヌノメカワニナが多く見られるという結果が得られた。
 貝類の観測結果に着目すると、ヌノメカワニナは、冷川と比べて、温泉排水の流入している平田川に多く生息していた。ヌノメカワニナは温排水を好む種であり、水温が高い河川に多く見られることが知られている。このことから、先行研究にあったティラピア等の外来魚と同様に、底生生物にも温泉排水の影響が及んでいる可能性が示唆された。