JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG55] 沿岸海洋⽣態系─1.⽔循環と陸海相互作⽤

コンビーナ:山田 誠(龍谷大学経済学部)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

[ACG55-P03] フィリピン中部バタン湾における水質特性の空間分布と季節変化

*宮島 利宏1Basina Ryan2Ferrera Charissa3森本 直子1Primavera Tirol Yasmin2San Diego-McGlone Maria Lourdes3浜口 昌巳4 (1.東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野、2.国立アクラン大学 ニューワシントン校、3.フィリピン大学 ディリマン校 海洋科学研究所、4.水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所)

キーワード:カキ養殖、海草藻場、懸濁態有機物

フィリピン中部のパナイ島北側に位置するバタン湾とそれに隣接するティナゴ海は入り組んだ地形の浅い内湾域で、マングローブを伐採して造成された養魚池で囲まれている。湾内では浅く平穏な立地条件を利用したカキやミドリイガイの養殖がさかんに行われ(写真参照)、フィリピン国内有数の産地となっている。発表者等は、バタン湾における二枚貝類の養殖に対して湾岸に生育するマングローブや海草藻場が有する環境改善機能に着目した研究を行っている。今回の発表では、二枚貝類の生理生態に関連の深い水質諸量(塩分、クロロフィル濃度、懸濁態有機物濃度など)の湾全体における分布の特徴と、カキ類の炭素・窒素安定同位体比から推定される主要餌資源についての予備調査結果を報告する。現地調査は2019年2月(乾季)と11月(雨季)の2回実施された。塩分は、河川水の流入する湾奥部から湾口部に向かって上昇する勾配は雨季・乾季ともに見られたが、海水の酸素同位体比の分布からは、乾季には湾奥部で蒸発が卓越していることが示唆された。クロロフィルや懸濁態有機物の濃度は湾奥部の方が高く、また懸濁態有機炭素の安定同位体比は湾奥部ほど低くなる勾配が見られた。これに対してカキ類の炭素安定同位体比は懸濁態有機炭素よりも高く、カキの主要餌資源は海域起源であることが分かる。また湾奥部と湾口近くとの間でカキの炭素同位体比に明瞭な違いはなく、海草藻場内もしくはその縁辺部で採取された個体において高くなる傾向が認められた。このことからカキ類の栄養生態に対して海草藻場の存在が強い影響を与えている可能性が示唆され、その詳細についてさらに研究を進めているところである。