JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG57] 北極域の科学

コンビーナ:庭野 匡思(気象研究所)、鄭 峻介(北海道大学 北極域研究センター)、中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(東京大学大気海洋研究所)

[ACG57-P08] 西部北極海における海氷減少による動物プランクトン量の増加

*伊東 素代1喜多村 稔1藤原 周1Eddy Carmack2甘糟 和男3荒 功一4内宮 万里央5平譯 享6小野寺 丈尚太郎1西野 茂人1菊地 隆1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.カナダ海洋漁業省海洋科学研究所、3.東京海洋大学、4.日本大学、5.理化学研究所、6.北海道大学)

キーワード:北極、海氷、動物プランクトン

西部北極海では、地球温暖化よる急激な海氷減少と、それに伴う海表面の温暖化、基礎生産の増加が起こっている。しかし、10年規模の長期変動を解析できる長期の生物データがほとんど無いため、それらの環境変化が海洋生態系に与える影響については分かっていなかった。そこで本研究では、まだ海氷が比較的多かった2000-2003年と、海氷減少が進行した2010-2013年について、チャクチ海に係留した音響データを用いた動物プランクトンバイオマスの解析を行った。その結果、この10年間で年平均の動物プランクトンバイオマスは1.6倍に増加し、バイオマスと水温から推定した植物プランクトンへの摂餌圧も増加していた。衛星観測による基礎生産速度と今回見積もった摂餌速度の差を沈降フラックスと考えたとき、この10年間で基礎生産は増加しているにも関わらず、沈降によるベントスへの有機物供給は減っていることが示唆された。これまで、ベーリング海やチャクチ海では、基礎生産産物のほとんどが水柱中で消費されずに沈降してベントス群集に供給される生態系システム(pelagic-benthic coupled system)が維持されていると考えられていたが、動物プランクトンによる有機物の消費が卓越する生態系システム(pelagic-pelagic coupled system)への移行が示唆される結果が得られた。