JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG58] 航空機・無人機観測による地球惑星科学の推進

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

[ACG58-P04] GNSS-Rドローン高度計における計測誤差の特性分析

*王 釧氷1市川 香1 (1.九州大学)

キーワード:GNSS-R、高度計、ドローン、衛星仰角、波面勾配

水面で反射されたGNSS信号は、GNSS衛星から直接届く信号の経路よりも長くなる。両者の距離差から高度を測定する方法は、GNSS-R測高法と呼ばれている。Ichikawa et al.(2019)では、ドローンにGNSS信号受信機を搭載してGNSS-R測高法に基づいてドローンの高さを推定し、7分間程度の時間平均を施して数cm程度の精度を達成した。このシステムではコストを低減するため、直達信号と反射信号で各々独立の信号受信機を使った。そのため、受信機間で時刻の差(以下「受信機時刻差」と呼ぶ)を生じ、各エポック毎に高度と受信機時刻差の両方を未知数として求める必要がある。これらの未知数は,同時に受信した複数の衛星で共通した量なので,各エポック毎の複数衛星の観測データに最小二乗法を用いることで推定することが可能である。実際に高度と受信機時刻差を5Hzの各エポック毎に計算したところ,受信機時刻差はエポック間で急激な変化を示さず,時間的にゆっくりと連続的に変動することが示唆された。もし受信機時刻差を長周期関数で近似して既知の値として修正することができれば,各エポックの未知数は高度だけになり,各衛星の(観測誤差を含んだ)高度の推定値を求めることができる。そこで本研究では,まずIchikawa et al.(2019)で求めた受信機時刻差を時間の二次関数で近似して補正し,各エポックで複数の衛星毎に高度の推定値を求め,この推定値に含まれる誤差成分を抽出する。その後、求めた誤差成分が,どのような時間変動特性を持つかを調べ,各々の衛星の仰角などとの関連性を調べる。具体的には、Ichikawa et al.(2019)の研究で、100m以上の高度でUAVがホバリングして比較的安定して計測した2017年1月7日の12:27〜12:30の3分間のデータを解析した。この時間中の衛星個数はほぼ5個で、それぞれの仰角は9.8度、11.3度、43.3度、44.3度、58度であった。精密測位によって別途測定されたUAVの高さを真実値として、各衛星の推定高度との違いから推定値の誤差分布を得た。誤差は衛星毎に異なる分布をしていて、仰角が高い衛星では解析した3分間の誤差はゆっくりとした変動のみで、短周期の変化は含まれていなかったが、仰角が低くなるにつれて周期が1〜2秒程度の短期変動が出現する頻度も振幅も共に増えた。最も仰角が低い衛星では、短周期の誤差の振幅は60mに達していた。ただし、1秒よりも短い極短周期は、仰角が低い衛星であっても顕著に含まれていなかった。こうした短周期変動成分の周期の特徴から、この誤差が水面の波の影響であることが示唆される。GNSS-R測高法は反射水面は水平であることを仮定しで幾何学的に解くが、波によって水面が傾斜していると、反射点が想定からずれるため、実際に計測された反射波の経路は大きくなり、誤差が生じる。さらに、同じ波面傾斜であっても衛星の仰角が低いほどこの誤差は大きくなるため,低仰角衛星ほど短周期変動の誤差の振幅が大きくなることは矛盾しない。