JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG59] 海洋表層-大気間の生物地球化学

コンビーナ:亀山 宗彦(北海道大学)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、相田 野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)、笹野 大輔(気象庁)

[ACG59-03] 東経165度線における表面海水中全炭酸濃度の変動と東経137度線との比較

*小野 恒1石井 雅男1谷崎 知穂2飯田 洋介2延与 和敬2笹野 大輔2 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁)

キーワード:東経165度線、東経137度線、全炭酸濃度、増加速度

海洋は大気中に放出された人為起源CO2の約30%を吸収し、大気中CO2の増加と地球温暖化の進行を緩和する働きをしている。海洋におけるCO2吸収は海水中の全炭酸濃度(DIC)を増加させるため、そのDICの変動を正確に把握することは、海洋におけるCO2吸収の現状の理解や将来予測にとって重要である。
 谷崎ら(JpGU2019)は気象庁の東経165度線における表面海水中二酸化炭素分圧(pCO2sea)データを基に、海面水温とDICとの有意な相関関係を利用し、重回帰分析を用いて亜寒帯域から赤道域にかけてのDIC平均増加速度を求めた。今回、気象庁の東経165度線のデータにSOCATの最新のデータセット(SOCAT v2019)を加え、谷崎らと同様の手法により東経165度線における亜熱帯域から熱帯域にかけてのDIC増加速度を算出した。さらに、同じく重回帰分析を用いて求めた気象庁の東経137度線におけるDIC増加速度と比較を行うことで、緯度帯ごとの特徴を調べた。
 その結果、東経165度線における1996〜2018年のDIC平均増加速度は、亜熱帯域で大きく、熱帯域では小さいという緯度分布や、北緯10度付近では大気CO2濃度の増加から想定されるDIC増加より遅いなど、概ね東経137度線のDIC増加速度の特徴と一致することがわかった。しかし、北緯33度におけるDIC増加速度は、大気CO2濃度の増加から想定される値および東経137度線より有意に大きいという点や、北緯25〜30度付近において重回帰分析で得られたDIC増加速度の誤差が南北周辺の緯度や東経137度線と比べて大きいなど、相違点も見られた(添付図)。

添付図は、東経165度線(赤)および東経137度線(青)における1996〜2018年のnDIC(塩分規格化したDIC)増加速度の緯度分布を表す。塗りつぶしはnDIC増加速度の95%信頼区間、グレーの線は大気CO2濃度の増加速度から想定されるnDIC増加速度を示す。