JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-GE 地質環境・土壌環境

[A-GE40] 地質媒体における流体移動、物質移行 及び環境評価

コンビーナ:斎藤 広隆(東京農工大学大学院農学研究院)、濱本 昌一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)、小島 悠揮(岐阜大学工学部)、森 也寸志(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

[AGE40-P02] ニューラルネットワークを用いた土壌有機物量の予測と土壌有機物、土壌構成要素の相関推定

*清広 真輝1森 也寸志1山本 裕太郎1 (1.岡山大学 大学院 環境生命科学研究科 )

キーワード:ニューラルネットワーク、土壌有機物、相関推定

土壌は陸域最大の炭素貯蔵庫であり、土壌有機物の命運予測は炭素蓄積・消失の鍵となる。しかし推定モデルは多数あり、未だに我々は自然のプロセスを理解しているとは言えない。そこでこれまでの関数系から有機物を予測するのではなく、ニューラルネットワークに新規に学習させ、土壌有機物に関係の深い特徴量を推測させることを考えた。

深層学習とは機械学習の一種でありニュールラネットワークとも呼ばれる。ニューラルネットワークはノード、層と呼ばれる単位から構成されており、ノードは重み付けされた入力を受け取り、さらに特定の重みをつけて次の層に出力、最終的に求めるデータを予測、出力する。各ノード間の重みは0と1以外に、その他の判断基準も選択できること、また隠れ層を複数用意することで、より複雑な現象を予測できることが深層学習の特徴であり、高い精度の予測を可能にする。

本実験ではこのニューラルネットワークを用いて、土壌有機物とその他土壌構成要素との関連の推定、また選択された特徴量から土壌有機物量を求め、構成要素が土壌有機物に与える影響を考察することを目的に実験を行った。

学習用のデータとしてHWSD(Harmonized World Soil Database)の表層土壌データを用いた。対象地は、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアとした。入力項目(以下特徴量)は粒径分布や陽イオン交換容量などの17項目である。

また、データの前処理として特徴量選択を行った。特徴量選択とは精度の高いモデルを作成するために重要な特徴量を自動選択する方法であり、本実験では再帰的特徴量削減手法(RFE) を用いた。その特徴量を使った推定モデルの中で最も精度の高いものを求め、性能評価した。またそのモデルを用い、各特徴量を変化させることで、選択した特徴量が有機物量にどのような影響を与えるかを推定した。

対象地域のデータで作成された高精度モデルが選択した特徴量のうち、3地域で一致したものはシルト含有率、乾燥密度、土壌の陽イオン交換容量、塩基飽和度であった。

また、最も精度の高かったモデルで選択された特徴量、パラメータを用いて再度モデルを作成し、特定の特徴量の値を平均値から10%ずつ増減させたことによる有機物への影響を求めた結果、ヨーロッパ、オーストラリアで影響が確認できた。

実験結果から、ヨーロッパモデルでは塩基飽和度が正にオーストラリアモデルでは負に影響していることが示唆された。アジアモデルにおいては各特徴量を変化させても土壌有機物は大きく変化しなかった。

ニューラルネットワークを用いて土壌有機物量の予測と相関推定を行った。3地域のデータから生成された高精度モデルにおいて4つの共通の特徴量が選択された。しかし選択された特徴量が有機物量に与える影響は地域ごとに異なることが示唆された。