JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW30] 水循環・水環境

コンビーナ:小谷 亜由美(名古屋大学 生命農学研究科)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、田上 雅浩(東京大学大学院工学系研究科)

[AHW30-P01] 気候変動が黒部川流域の地表面の水収支と地下水位に与える影響評価

*松浦 拓哉1手計 太一1 (1.富山県立大学大学院)

本研究の目的は,分布型水収支モデルを用いて,気候変動が黒部川流域の地表面の水収支に与えた影響を明らかにすることである.水収支解析で得られた地下浸透量を3次元地下水モデルに与えることで,気候変動が黒部川扇状地の地下水位に与えた影響を明らかにした.

気候変動により地球の気温は上昇傾向にあり,RCP8.5シナリオの21世紀末の気温は1986-2005年の平均気温と比較して2.6-4.8℃上昇すると指摘されている.気候変動による気温上昇を考えた場合,降雪量や融雪量の減少が予測され,黒部川流域の水資源量に影響を与えると考えられる.将来の気候変化が河川流量や表面流出に与える影響評価の研究は数多くある.一方,将来の気候変化が地下水環境に与える影響としては地下水位の変化や涵養域が変化すると予測はされているが,定量的に影響評価を行った研究はない.

本研究では、複数の将来予測モデル結果を使用して気候変動が水資源量,地下水位に与えた影響評価を実施した.将来予測シナリオはRCP2.6,RCP8.5の2つである.土地利用データは2014年のデータを使用した.地下水モデルの層構造は731本の柱状図データを使用し作成した.計算時間間隔は水収支解析が日であり,地下水解析が月である.

黒部川流域の日平均降水量,日射量は現在気候と将来気候では変化がないことがわかった.日平均気温はRCP2.6シナリオのCaseでは現在気候と将来気候では変化がないことがわかった.一方,RCP8.5シナリオのCaseでは現在気候と比較すると、21世紀末では黒部川流域の気温が3.6度上昇することがわかった.気温が上昇した結果,黒部川流域の年間積雪水量は298cm(50%)減少,積雪水量のピークは8日早期化,消雪時期は22日早まることが明らかになった.融雪の時期が早まった結果,21世紀末の表面流出量と地下浸透量のピークは,現在気候よりも25日早期化することが明らかになった.黒部川流域の水資源量を推定した結果,黒部川流域の水循環は21世紀後半までに大きく変化することが明らかになった.黒部川扇状地に位置する地下水の主な涵養源は黒部川であり,黒部川の水循環の変化は地下水に大きな影響を与えると考えられる.地下水解析を実施した結果,現在気候と比較して,21世紀末では扇状地の地下水位は2月~3月で増加し,5月~6月で減少することが明らかになった.