JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW32] 水圏生態系における物質輸送と循環:源流から沿岸まで

コンビーナ:伴 修平(公立大学法人 滋賀県立大学)、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)、細野 高啓(熊本大学大学院先端科学研究部)、前田 守弘(岡山大学)

[AHW32-P25] 日本全国の降水-地下水-湧水-河川水を対象とした酸素・水素安定同位体マップの作成ならびにその特徴

*中内 翔太1細野 高啓1一柳 錦平1 (1.熊本大学)

キーワード:安定同位体、降水、地下水、河川水、湧水

地球表層において蒸発した水は降水として地表に降り,地下水,湧水,河川水として流動し,やがてまた海へ流れ込む.このような流動系の中で水の水素・酸素安定同位体比は異なる水の混合や蒸発などの諸プロセスに応じて変化することが知られており,日本の各地域でこの特徴を利用した研究が行われている.2020年となった現在,各地の流域における同位体データはかなり蓄積されてきた.しかしながら,それらをとりまとめることで見えてくる傾向についての解釈はあまり行われていない.本研究では現在までに報告された日本国内の降水,地下水,湧水および河川水の水素・酸素安定同位体比のデータを可能な限り収集し,各水体に応じた同位体比のマッピングを行うとともに,各水体間の関係を比較・考察した.その結果,次のことが分かった.すなわち,同位体比のマッピングから地下水を除く降水,湧水,河川水においては緯度が高くなるほど,または標高が高くなるほど同位体比は低く,d-excessは日本海側の地域で高くなる傾向が確認された.降水の同位体比の分布の特徴は河川水および湧水に反映される一方,地下水については同位体比を特徴づける別の要因があると考えられる.加えて,δダイヤグラムにおける回帰直線の傾きの違いは異なる水の混合や蒸発の影響によることから,各水体におけるその傾きを比較することで,本邦における平均的な水の経路について考察した.解析結果,降水として山体に降った水は一度地面に入り込み,流下の過程で大部分が山体中や山麓に湧出し,それらが連なることで源流の河川を形成すると考えられる.平野部の地下水を涵養する水の特徴は,山体の地下水ではなくむしろこうした源流域の河川と類似する.また,山体の湧水と比べて低い標高にある湧水は源流の河川水より低い標高域で涵養されること,および源流ではない河川水は水体の中で最も蒸発の影響を受けていることが分かった.また,茨城から瀬戸内を通って北九州にかけて帯状に連続する低d-excess帯の存在が明らかとなった.