JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW34] 同位体水文学 2020

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)

[AHW34-02] 夏季停滞期における湖沼水の溶存無機炭素の起源および供給プロセス

★招待講演

*山中 勝1 (1.日本大学 文理学部 地球科学科)

キーワード:炭素安定同位体、呼吸と光合成、停滞状態、表水層と深水層

群馬県中央部に位置する榛名湖を対象として,夏季停滞期における溶存無機炭素(DIC)の起源および供給プロセスについて,炭素同位体組成(d13CDIC)と水質組成を用いて検討を行った。水温の深度プロファイルから榛名湖水は表水層と深水層という大きく二つの層に分類され,その間にある深度7~8 mには水温躍層を持つことが明らかとなった。表水層では深水層と比較して,より高いpHと溶存酸素(DO),より低いDIC濃度,CO2分圧(logPCO2),d13CDIC値を持っており,これらは有光層としての表水層における光合成の結果により生じたものといえる。同位体濃縮係数(e)を-16.6‰としたRayleigh modelによる検討を行った結果,深水層から表水層にかけて認められたDICの濃度低下およびd13CDIC値の上昇は,最大30%のDIC消費をともなう光合成で十分に説明することができた。さらに,榛名湖水と初期状態で平衡にあるCO2ガスのd13C値について算出を行ったところ,約-21‰と求められた。この値から判断して,榛名湖水のDICのほとんどは呼吸を通じた有機物分解によりもたらされており,大気CO2ガスの影響は無視できるものといえる。