JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW34] 同位体水文学 2020

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)

[AHW34-05] 水理モデルを用いたネパールカトマンズ盆地における混合・反応が地下水窒素汚染に及ぼす影響のシミュレーション解析

*横澤 賢1,2西田 継1,3遠山 忠1,3中村 高志1,3石平 博1,3 (1.山梨大学、2.山梨大学大学院流域環境科学特別教育プログラム、3.国際流域環境研究センター)

キーワード:カトマンズ盆地、地下水、硝酸イオン、アンモニウムイオン、窒素・酸素安定同位体比

人口増加に伴い水需要が増加している途上国地域では、地下水は貴重な水源にも関わらず、工業廃水や生活排水、農業活動による窒素汚染が深刻化している。地下環境では、窒素循環に関する微生物反応や地下水の混合が複雑に絡み合い窒素化合物の形態や濃度が変化しているため、調査データのみではこれらの影響を捉えるには限界がある。そこで本研究では、ネパールカトマンズ盆地における地下水の窒素汚染をケーススタディーとして、シミュレーションモデルを用いて地下水中の窒素形態変化と地下水混合を再現し、それらの影響を理解することを目的とした。
解析に利用したデータは2016年8月と9月に行われたカトマンズ盆地の井戸水調査で取得した。モデルは反応モデルと混合モデルの2種類を作成し、差分計算を用いてモデル計算を行った。反応モデルは既報のモデルを利用した。また混合モデルは文献値をもとに作成した水循環の概念図を利用して、河川および地下水の水量と濃度を計算した。
モデルシミュレーション解析の結果、河川では時間経過によってアンモニウムイオンから硝酸イオンへの窒素形態の変化が見られ、地下水では脱窒による硝酸イオンの減少が見られた。一方で、下水の涵養によるアンモニウムイオンによる濃度上昇の影響は確認されなかった。さらに、下水混合による硝酸イオンの窒素安定同位体比の大きな変化は見られず、雨水混合による硝酸イオンの酸素安定同位体比の増加が見られた。以上のように、モデルシミュレーションによって、地下水の窒素汚染の一旦を明らかにすることができた。