JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW36] 都市域の水環境と地質

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)

[AHW36-P01] 首都圏における地下温度の経年的な上昇とその要因-横浜市・川崎市および周辺地域の地下温暖化の特徴

*宮越 昭暢1林 武司2 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門、2.秋田大学教育文化学部)

キーワード:地下温度プロファイル、地下温暖化、地下水流動、地下水利用、都市化、首都圏

首都圏では,地下環境の温暖化が都市域や郊外を含め広域に進んでいることが明らかとなってきた(宮越ほか,2019など)。筆者らは,東京都および埼玉県の複数の観測井における地下温度プロファイルの繰り返し測定(2000年以降)や地下温度モニタリング(2009年以降)の結果に基づき,地下浅部を中心に温度上昇が生じていることを確認している。また,地下温度分布とその経年的な変化には明瞭な地域差が認められ,都心部では郊外よりも相対的に高温を示して温度上昇が大きい。武蔵野台地など地下水利用量の多い地域では,地下温度分布に地下水流動の影響が強く反映され,相対的に地下深部まで温度上昇が及んでいる。首都圏の地下温暖化は,都市化に伴う地表面や地下浅部の温度上昇や地下水利用を反映した地下水流動,地球温暖化の複合的な影響により,複雑に進行している。

本研究では,首都圏南部に位置する神奈川県横浜市および川崎市に分布する地盤沈下・地下水位観測井20地点(横浜市:12地点,川崎市:8地点)において,2018年11月~2019年3月に地下温度プロファイルの観測を実施した。これらの観測井のうち14地点では,2001年(川崎市:6地点)もしくは2004年(横浜市:8地点)にも地下温度プロファイル観測を実施している。これらのデータを用いて、両市域における現在の地下温度分布を把握するとともに、過去14~17年間の地下温度の変化傾向を把握した。

これら二時期の観測データを比較した結果,14地点の全てにおいて地下温暖化が確認された。地下温暖化の程度には地域差がみられ、内陸部の4地点では特に温度上昇が大きい。これら4地点を除く地下温度上昇率は,深度30mで約1.6~2.9×10-2℃/年,深度40mでは約1.0~2.0×10-2℃/年と概算され,上昇率は深度とともに低下した。また温度上昇率は,臨海部に位置する中心市街地やその近傍等で大きい傾向を示した。一方,特に大きな温度上昇率を示した内陸部の4地点では,深度30~40mにおいて3.0×10-2℃/年程度を示した。これらの地点では,特定の深度で温度上昇が極大となる傾向が認められ,地質構造との対比から,地下水利用の影響が要因として考えられた。

本地域では,関東平野中央部と比較して地下水流動系の空間的な規模が小さいと考えられるが,本地域においても地下温暖化が広く進行しており,その要因として都市化や地下水流動の変化,地下温暖化が影響していることが明らかとなった。発表では,両市域の地下温度環境の特徴を他の東京湾湾岸域と対比しながら報告する。

本研究における地下水位・地盤沈下観測井の利用について,横浜市環境創造局環境科学研究所ならびに川崎市環境局環境対策部水質環境課の協力を受けた。