JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS18] 陸域と海域をつなぐ水循環と、沿岸域の海洋循環・物質循環

コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、田中 潔(東京大学)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、速水 祐一(佐賀大学)

[AOS18-04] カムチャツカ半島からの淡水供給が制御するオホーツク海と北太平洋の子午面循環

*三寺 史夫1美山 透2白岩 孝行1史 穆清3小松 謙介4立花 義裕4中田 聡史5西川 はつみ1 (1.北海道大学低温科学研究所、2.海洋研究開発機構、3.北海道大学大学院環境科学院、4.三重大学、5.国立環境研究所)

キーワード:オホーツク海、カムチャツカ、高密度陸棚水、河川からの淡水供給、塩分、子午面循環

オホーツク海の北西陸棚域では高密度陸棚水(DSW)が形成され、溶存酸素、CO2、鉄など様々な物質がそれに乗り、海洋中層を通って最終的に北太平洋へと運ばれる。DSWの沈み込み強度を決めるのは塩分である。以前の我々の研究(Uehara et al., 2014, Progress in Oceanography)では、DSWの塩分変動がカムチャツカ半島上での降水量-蒸発量(P-E)と有意な相関を持つ、ということが見いだされた。しかしながら、河川流出量とDSW塩分との定量的な議論はこれまで行われていない。

DSW塩分に対するカムチャツカ半島からの河川流出水の効果について、大気、陸面、海洋を通した定量的な研究を現在進めており、本講演ではその概要について報告する。ロシアHYDROMETから取得したカムチャツカ半島の13の河川ステーションデータと、領域気象モデルWRFから得た河川流量を比較したところ、カムチャツカ半島から流出する淡水流量は、半島周辺の沿岸海洋に直接降る降水量を含めた全淡水流量の約半分を占めていることがわかった。また、流域圏水循環モデルSWATを用いた河川流量評価では、半島西部の淡水流出量の年々変動がDSWの塩分変動と有意な逆相関関係を持つことが示された。可視の衛星画像(MODIS)は、河口からの流出水が非常に細いプルームとなって半島に沿って流れる様子を捉え、沿岸海洋モデルFVCOMを用いたオホーツク海のシミュレーションは、この細い沿岸プルームを現実的に再現していた。河川流出水有り無しの比較を行ったところ、沿岸流の低塩化はDSWの沈み込みを通して中層まで及んでいることがわかった。