JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS20] 沿岸域における混合,渦,内部波に関わる諸物理現象

コンビーナ:永井 平(東京大学理学系研究科)、堤 英輔(東京大学大気海洋研究所)、増永 英治(Ibaraki University)

[AOS20-06] 浅水湖における鉛直混合と湖底熱フラックスの観測的研究

*増永 英治1小室 俊輔2北村 立実2 (1.茨城大学、2.茨城県霞ケ浦環境科学センター)

キーワード:混合、熱輸送、沿岸域

本研究は夏季に霞ヶ浦において観測された鉛直混合と熱収支について報告する.沿岸海域や湖は陸域と海洋間の物質,熱,浮力等の交換にとって重要であることが知られている.近年の研究により浅い湖では湖底への熱輸送が鉛直混合に強く寄与していることが提唱されている (Masunaga and Komuro, 2019, Limonology).しかしながら,浅水域における混合の計測は,安定自由落下を用いた微細構造計測の特性上実施が難しい.本研究では,近年開発された高周期で水温を計測可能な係留系で取得されたEllison scaleを用いて鉛直渦拡散係数を推定する手法を採用した(Ivey et al., 2018, JGR: Oceans).鉛直渦拡散係数は,gradient Richardson number (Ri) と整合しており,湖の混合強度がRiで説明可能であることを示唆している.またRiは,混合状態の指標であるMonin-Obukhov length scaleと内部フルード数とも高い相関関係を示した.湖水湖底境界から0.2 m下部で計測された堆積物温度は,境界から0.2 m上部で計測された湖底付近水温より1.5度程度高く,湖水から湖底への熱フラックスが発生していることを示唆した.Riを考慮に入れバルク法を用いて底質への熱フラックス(Hsed)を推定した(顕熱計算時に,不安定と共にStanton numberを高く設定する大気モデルで一般的に用いられる手法である(Louis, 1979)).Hsedは,湖面熱フラックスから説明される水温偏差と直接観測された水温の差から求めた湖面残差熱フラックス(HR)と整合していた.日平均したHsedHR間の相関係数0.84であった.このことは湖水の熱収支を見積もるためには,水柱の安定性(混合状態)と水と堆積物間の熱収支を考慮に入れなければらないことを示唆している.これら結果から,混合によってコントロールされている湖底熱フラックスが,浅い湖や沿岸海域に強い影響を与えていることが考えられる.