JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS21] 海洋と大気の波動・渦・循環力学

コンビーナ:田中 祐希(福井県立大学)、古恵 亮(APL/JAMSTEC)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)

[AOS21-P02] データ同化を用いた金星大気の衛星間電波掩蔽観測のミッション立案に向けた研究

*細野 朝子1藤澤 由貴子2杉本 憲彦2阿部 未来2菊池 由佳子3山本 智貴4川端 洋輔4五十里 哲4安藤 紘基5高木 征弘5Itziar Garate Lopez6Sebastien Lebonnois7Chi Ao8 (1.豊島岡女子学園、2.慶應義塾大学、3.横浜雙葉学園、4.東京大学、5.京都産業大学、6.バスク大学、7.ソルボンヌ大学、8.ジェット推進研究所)

キーワード:データ同化、金星大気、電波掩蔽

金星大気の高度約60-70 kmでは、極域が周辺に比べて温度が高く、その周辺の緯度約60-80度で低温になる「コールドカラー」と呼ばれる構造が存在する。これまで金星大気大循環モデル(AFES-Venus)では、コールドカラーの再現に成功している1が、実際の観測と比べて極とコールドカラーの温度差が小さい。また近年、局所アンサンブル変換カルマンフィルター(LETKF)を用いた金星大気データ同化システム(VALEDAS)の開発にも成功している2。本研究では、金星の衛星間電波掩蔽観測を想定した疑似観測データを作成し、VALEDASを用いて同化した。疑似観測データにはコールドカラーの温度差をより良く再現しているフランスの金星大気大循環モデル(IPSL VGCM)のデータ3から観測地点、観測数、時間間隔等の条件を変えたものを複数セット作成した。そして、疑似観測結果のコールドカラーの再現性から衛星間電波掩蔽観測の有用性を調査した。その結果、コールドカラーは2-3地点を4-6時間の間隔で観測すれば再現でき、三機の衛星があれば少なくとも極地域の大気の現象の再現には有望であることが分かった4。一方で、AFES-VenusとIPSL VGCM間には温度バイアスがあり、観測頻度や観測個数が非常に多い場合にコールドカラーが壊れてしまうということが分かった。そこで、本研究ではモデル間の温度バイアスの補正を行った。下の図は、北緯60-85度に72点観測地点を持ち毎時観測した場合の、30-90度における北極から見た高度66 kmでの温度場であり、(a)がバイアス補正前、(b)がバイアス補正後である。この結果から、モデル間の温度バイアスは補正可能であることが示唆される。ポスター発表では、軌道計算によって、実軌道を考慮した観測についての同化結果も示す予定である。



[1] The puzzling Venusian polar atmospheric structure reproduced by a general circulation model, H. Ando et al., Nature Communications (2016).

[2] Development of an ensemble Kalman filter data assimilation system for the Venusian atmosphere, N. Sugimoto et al., Scientific Reports (2017).

[3] Latitudinal variation of clouds’ structure responsible for Venus’ cold collar, I. Garate-Lopez and S. Lebonnois, Icarus, (2018).

[4] Observing system simulation experiment for radio occultation measurements of the

Venus atmosphere among small satellites, Norihiko Sugimoto., Journal of Japan Society of Civil Engineers A2: Applied Mechanics, (2019).