JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS24] Exploring new frontiers of oceanic mixing research in the next decade

コンビーナ:日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、安田 一郎(東京大学大気海洋研究所)、Lakshmi Kantha(Aerospace Engineering Sciences, University of Colorado, Boulder, Colorado, USA)

[AOS24-P12] 西部北太平洋貧栄養亜熱帯域の生物地球化学に対する台風の影響の再評価

*本多 牧生1吉川 裕2 (1.海洋研究開発機構、2.京都大学)

キーワード:台風、貧栄養亜熱帯海域、生物地球化学、3次元モデルシミュレーション、エクマン湧昇、近慣性内部波

西部北太平洋亜熱帯海域は貧栄養海域にもかかわらず富栄養化の亜寒帯海域に匹敵するほど基礎生産力が高いことが西部北太平洋生物地球化学比較研究(K2S1プロジェクト)で明らかとなった(Honda et al. JO 2017)。この高い基礎生産力を維持する栄養塩の供給源として、中規模低気圧性渦の存在が示唆された(Honda et al. PEPS 2018)。本論文では同海域を通過する台風についても考察されたが、観測結果や数値シミュレーションの結果、台風は栄養塩供給源としては貢献度が小さいと結論づけた。しかし多くの論文が台風による栄養塩の供給と植物プランクトン量の増加を報告してきた。また本論文では台風の影響を鉛直一次元(1D)モデルで評価したため、より正確な台風の影響評価のためには三次元(3D)モデルでの評価が必要との指摘を受けていた。そこで貧栄養海域における生物地球化学への台風の影響を再検討することとした。まずは予備実験として西部北太平洋亜熱帯観測定点KEOのブイで2014年に通過した台風を対象に、同ブイで観測された水温、塩分と予想される栄養塩の鉛直分布を初期値とする実海域で観測された台風を模した仮想的な軸対称風応力場を与えて、海洋の物理学的な変動を1Dモデルと3Dモデルによりシミュレーションした。その結果、3Dモデルでは、1Dモデルで再現される風成乱流による鉛直混合に加え、エクマン湧昇流とKEOブイで観測されたものと同様な近慣性内部波が再現された。そして3Dモデルでシミュレーションした水深50m以浅への栄養塩供給量は1Dモデルでシミュレーションしたものよりも有意に大きかった。今後はこの3Dモデルを用いて、現実的な台風に伴う風応力場をなど、対象海域の気象、海洋物理、海洋生物化学パラメータによるシミュレーションを実施するとともに、様々なケーススタディを行いどのような台風が貧栄養海域の生物地球化学に影響を与えるかについて考察する予定である。