JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS24] Exploring new frontiers of oceanic mixing research in the next decade

コンビーナ:日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、安田 一郎(東京大学大気海洋研究所)、Lakshmi Kantha(Aerospace Engineering Sciences, University of Colorado, Boulder, Colorado, USA)

[AOS24-P15] 潮汐による鉛直混合が北太平洋北西部の生物化学循環に与える影響

*三角 和弘1坪野 考樹2津旨 大輔2 (1.電力中央研究所 企画グループ、2.電力中央研究所 環境科学研究所)

キーワード:鉛直混合、基礎生産、栄養塩、鉄

北太平洋北西部は、基礎生産量が高く生物の炭素取込による季節的なpCO2の変動が全海洋でもっとも大きい海域の一つである。北太平洋北西部は、オホーツク海やベーリング海などの縁辺海と隣接しており、その海峡部では潮汐流と急峻な海底地形により発生する内部波の砕波により強い鉛直混合が引き起こされている。海峡部の鉛直混合が中深層に豊富に存在する栄養塩をくみ上げることで、北太平洋北西部の大きなpCO2変動を駆動していることが推察されるが、その定量的な関係は明らかでない。

本研究では、潮汐による鉛直混合が北太平洋北西部の基礎生産に与える影響を調べるため、この海域を対象として海洋生態系-物質循環モデルを構築した。海洋モデルにはROMS(Regional Ocean Modeling System)、生態系-物質循環モデルにはBEC(Biogeochemical Elemental Cycling)モデルを用いた。北太平洋北西部の海洋物理的な特徴、亜熱帯、亜寒帯循環域とそれらを分ける混合水域及び北太平洋中層水の形成、を現実的に再現するため、物理モデルの解像度は1/12°に設定した。BECモデルは、5種の栄養塩(硝酸塩、アンモニア、リン酸塩、ケイ酸塩、鉄)と炭酸系の循環が組み込まれており、大型、小型の植物プランクトンの動態を計算することができる。潮汐による鉛直混合は、潮汐モデルで計算されたエネルギー変換率からパラメタリゼーションにより鉛直拡散係数に変換することで計算した。

潮汐による鉛直混合を考慮しないケース(Tmix OFF)と考慮したケース(Tmix ON)の結果を比較したところ、北太平洋北西部の植物プランクトンのバイオマス濃度に明瞭な違いが見られた(図、4月の月平均の植物プランクトンのバイオマス濃度、単位はmmolC/m3、白の線は10 mmolC/m3でそれより高濃度は対数で色づけ)。植物プランクトンのバイオマス濃度の増加は、海峡部で顕著であり、潮汐による鉛直混合が栄養塩のくみ上げることで局所的に基礎生産を高めていることが示唆された。さらに、バイオマス濃度の増加は、海峡の周辺海域や黒潮・親潮混合水域に拡がっていた。海峡の周辺海域での増加は中規模渦によるバイオマスや栄養塩の水平輸送によるものと考えられた。一方、黒潮・親潮混合水域での増加は潮汐による鉛直混合が大規模な栄養塩の鉛直構造が変化させることで、混合層による栄養塩のエントレインメントを強化するためだと推察された。