JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS26] 全球・海盆規模海洋観測システムの現状、研究成果と今後

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、増田 周平(海洋研究開発機構)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、藤木 徹一(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

[AOS26-P09] Deep Argoフロートの塩分補正データセットの公開

*佐藤 佳奈子1小林 大洋1細田 滋毅1増田 周平1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:Argoフロート、深海、塩分

背景・目的
国際アルゴ計画により、海洋の平均水深の半分である2,000dbar以浅の海洋の水温・塩分のモニタリングが継続されデータの蓄積が進み、海洋の貯熱量の時間変化等が明らかになってきた。一方で、断片的ではあるが、GO-SHIP等の高精度船舶観測の結果、海洋深層に生じた変化の影響は地球環境に対して無視できない程大きいことが明らかになってきている。

このような背景から、海洋深層の面的なモニタリングの必要性が認識され、その一つの方法として、深層を計測するプロファイリングフロートが近年開発された。海洋研究開発機構では(株)鶴見精機とともに深海用プロファイリングフロートDeep NINJAを開発し運用しているが、これに加えて、6,000dbarまでのモニタリングを目的とし、アメリカで開発された深海用プロファイリングフロートAPEX-Deep[TT1] を2017年11月より投入を開始している。2020年2月14現在23台を運用中である。APEX- Deepには深海用プロファイリングフロート用に開発されたCTDセンサーが搭載されている。

このCTDセンサーが計測した塩分値とフロート投入時の船舶CTDデータの偏差には圧力依存性が存在することが分かった(Kobayashi and Sato (in preparation))。そこで、APEX-Deepが計測した塩分データを補正し、データセットを作成した。ここでは、データセットの紹介をするとともに、塩分偏差の時間変化について検証した結果を発表する。
APEX-Deepフロート
APEX-DeepフロートはアメリカTELEDYNE MARINE社で製造販売されている深海用プロファイリングフロートである。APEX-Deepは6,000dbarまで計測可能であり、搭載されているCTDセンサーは深海用プロファイリングフロート用に開発されたアメリカSea Bird Scientific社のSBE61である。

当機構では、2019年7月11日現在、23台のAPEX-Deepを太平洋、インド洋、及び南大洋にて運用している。
APEX-Deepの塩分補正方法
APEX-Deepが計測した塩分値とフロート投入時の船舶CTDによる塩分値を比較したところ、高圧になるほど低塩分になるという塩分偏差の圧力依存性が確認された(Kobayashi and Sato (in preparation))。塩分偏差と圧力は線形に近い関係であることから、圧力の回帰直線を仮定して補正した。その結果、2200dbar以深の塩分補正値は±0.001の精度となった。また、深層における塩分偏差は3か月程度安定していることがわかった。
APEX-Deepの塩分補正データセット
3.の方法で補正した塩分補正値データセットを公開する。これまで投入したAPEX-Deepのうち、CTDセンサーに明らかな不具合が見られたフロートは補正対象外とした。さらに、運用途中からCTDセンサーに不具合が発生したフロートは、不具合発生後に取得したプロファイルを補正対象外とした。データセットには、APEX-Deepフロート投入時の船舶CTDデータが入手できたAPEX-Deepのデータが含まれる。フロート投入時船舶CTDデータが入手でき次第、塩分補正値を計算しデータセットに追加していく。多くのAPEX-Deepが運用中であるため、データセットの更新頻度は月に1度とする。
データセットはcsv形式とnetcdf形式の2つの形式で公開する。発表では、データセットの公開先のアドレスを示す予定である。