JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS26] 全球・海盆規模海洋観測システムの現状、研究成果と今後

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、増田 周平(海洋研究開発機構)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、藤木 徹一(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

[AOS26-P10] 教師なしクラスタリングによって同定される中緯度北西太平洋における海洋構造の境界

*三部 文香1須賀 利雄1,2 (1.東北大学 大学院理学研究科、2.海洋研究開発機構)

キーワード:中緯度北西太平洋、黒潮続流前線、亜寒帯境界、Argoフロート、教師なしクラスタリング、機械学習

中緯度北西太平洋は亜熱帯および亜寒帯起源の海水がぶつかり合う海域であり、黒潮続流前線を始めとした海水の性質の空間分布の境界が多く定義されてきた。これらの境界の位置は季節・経年的に変動し、大気海洋相互作用の特性や生態系の変動に繋がる場合もあることから、境界の性質を正しく理解することが重要である。これまで中緯度北西太平洋の境界は、例えば黒潮続流は深度300m面上の12℃等温線といったように、特定の深度面上における特定の等温線または等塩線と定義されてきた。このような境界の定義は海洋のデータの時空間分布が十分でなかった40年ほど前に、100mや300mといった特定の深度のみの水温や塩分の情報からでも境界を決められるように定められた。現在は気候変動により海洋環境が変化し、40年前の定義では境界を正しく同定できない可能性がある。また、2000年以降のArgoフロート観測網拡充に伴い鉛直方向に多層な海洋データが時空間的に満遍なく大量に利用可能になり、新たな手法で境界を同定できる状況にあるが、その点についての研究は未だになされていない。そこで本研究では、機械学習の一種である教師なしクラスタリングをArgoデータに適用し、プロファイルの形を分類する手法、Profile Classification Model(PCM)を用いて海域区分を行い、その境目に着目して境界を同定することを目指した。PCMはフランス国立海洋研究所のGuillaume Maze博士によって開発された手法である。先行研究によって、この手法を北大西洋と南大洋のArgoデータに適用した際、それぞれのクラスの分布は地図上で特定の領域に集中することがわかっている。そのため、特定の性質を持つ海水がどこにあり、どこに海水の性質が変わる境界があるかを客観的に調べることができる。本研究では、中緯度北西太平洋(30~60˚N、140~180˚E)のArgoフロートによる深度5~1000mの水温、塩分の鉛直データおよそ20年分を使用した。クラス数を5~9としてPCMを行った結果、いずれの場合もそれぞれのクラスが特定の領域を成しており、クラス数を増やすごとに領域が細分化されていく様子が見られた。また、クラス数を7とした場合、各クラスの境界の位置が黒潮続流、黒潮続流北部支流、亜寒帯境界、亜寒帯前線の4つの境界と概ね一致した。このことから、境界を同定する手法としてPCMが有効であることが示唆された。