JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS28] 海洋物理学一般

コンビーナ:川合 義美(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋観測研究センター)、北出 裕二郎(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科)

[AOS28-04] 海洋大循環モデルを用いたLGMにおける潮汐混合の変化が大西洋子午面循環に及ぼす影響の見積もり

*曽根田 哲也1岡 顕1 (1.東京大学大気海洋研究所)

大西洋子午面循環 (AMOC:Atlantic Meridional Overturning Circulation)をはじめとする深層循環を駆動するエネルギーは、潮汐混合と風応力に由来する。現在、順圧潮汐流のエネルギーは3.5TWほど生み出されているが、そのうち2.3TWほどが浅瀬を中心とする底摩擦で失われ、内部潮汐により傾圧エネルギーへは1.1TWほどが転換されており、その転換された傾圧エネルギーのうち、半分ほどが深層循環を駆動するエネルギーとなっていると考えられている。最終氷期最大期(LGM:Last Gracial Maximum)には大陸棚が陸化することによって、底摩擦で消費されるエネルギーが減少し、内部潮汐のエネルギーが増加したと考えられている。また、先行研究において、LGMの再現地形として用いる地形データセットの違いにより、内部潮汐の総増加量や海域ごとの増加傾向が変わり、それがAMOCに影響を及ぼしたという報告もなされている。しかし、多くのLGMの海洋モデリング研究では、内部
潮汐の増大量は考慮されておらず、評価し直す必要がある。本研究では、内部潮汐エネルギー量の増加がAMOCに及ぼす影響を調べるため、海洋大循環モデルCOCOを用いた数値実験を行った。具体的には、LGMにおける海面の境界条件のもと、現在地形データから計算された内部潮汐による潮汐混合の大きさを定数倍する感度実験を行った。その結果、LGMにおいて、AMOCの強化は内部潮汐の増加に対し、ある閾値を持ってそれを超えると急激に変化することが示された。また、海盆ごとに内部潮汐量を定数倍して数値実験を行なった結果、AMOCの強化は、太平洋における内部潮汐の増加に最も感度があること、次いで南大洋に感度があり、大西洋の内部潮汐の増加にはあまり感度がないことが示された。