JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BC 生物地球化学

[B-BC03] 地球惑星科学 生命圏フロンティア

コンビーナ:高野 淑識(海洋研究開発機構)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、加藤 真悟(国立研究開発法人理化学研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

[BBC03-P05] 高度好塩性アーキアの脂質コアのアーキオール類縁体の多様性の再発見

*山内 敬明1 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:好塩性アーキア、アーキオール、多様性、エーテル脂質

アーキアは全て特徴的なイソプレノイド脂質コアであるアーキオール(C20イソプレノイドジエーテル)を持っている。さらに好塩性アーキアはC25イソプレノイドを一つ持つC25-C20 ジエーテルを生産する[1]。また近年Dawsonらは幾つかの超好塩性アーキアでは, およびその不飽和体が生産されることを報告した[2]。一方,Teixidorらは岩塩中にはの位置異性体であるの存在を報告している[3]。
投稿者はDawsonの提唱する構造の不飽和体化合物の化学合成から彼らの提唱する化学構造ではない二重結合の位置が異なる異性体の存在を示唆する結果を報告した[4]。またの化学合成からTeixidorらの報告している岩塩中のジエーテルがの混合物であることを強く示唆する結果を得た[5]。
さて,はエーテル結合の位置異性体であるが,これまで培養微生物体からの検出例はなく常にのみが存在するとされてきた。また私の予察的実験によると化学合成と微生物試料の比較からとも微生物種から多様な割合の不飽和化合物が混在することを示唆する結果を得てきた。現在理研BRCにて得られる,特に高い塩濃度であるフィールド,岩塩などから単離された菌株を分与いただき,その培養と分析から,本当には微生物にはないのか,また生産菌による不飽和化合物の存在とその構造の詳細解析が可能か調査を行なっており,その途中経過を報告する。
結果現在6菌株の培養,脂質抽出と再分析を行なっており,さらにコア脂質の調製に関し,ヒドロキシアーキオールの調製で用いられているアルカリ性加水分解[6]を用いることにより,様々な菌株において不飽和アーキオールが存在することと,Halorhabdus utahensis (JCM 11049)にはおよびその不飽和化合物がコア脂質として存在することが明らかとなった。これまでアーキオール関連化合物の多様性はと少々の不飽和化合物の存在のみ示され,あまり多様ではないと思われてきたが,実際はかなりの多様性をもって存在していることがわかった。また現状培養微生物試料からのの検出は初めてである。さらに網羅的分析を行う予定である。
[1] De Rosa et al., J. Gen Microbiol (1982) 265: 343.
[2] Dawson et al., Org Geochem (1982) 48: 1.
[3] Teixidor et al., Geochem Cosmochim Acta (1993) 57: 4479.
[4] Yamauchi, Res Org Geochem (2019) 35: 1.
[5] Yamauchi, (2019) JpGU meeting 2019, BBG02-P03.
[6] Sprott et al., J Biol Chem (1990) 265: 13735.