JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)

[BCG06-P04] Geochemical constraints on the Earth environment after the Lomagundi Event;The Cape Smith belt, Canada

★Invited Papers

*元村 健人1清川 昌一1池原 実2佐野 貴司3田中 健太郎4三木 翼4佐野 有司4 (1.九州大学、2.高知大学、3.国立科学博物館、4.東京大学)

キーワード:古原生代、有機炭素同位体比

古原生代(25-20億年前)の始まりは,約25–23億年前の大酸化事変(Great Oxidation Event: GOE)や炭素同位体比の正異常(Lomagundi Event:約22-20億年前)により特徴付けられる.これらのイベントは太古代−原生代間での一次生産の増大や,海洋硫酸イオン濃度の増加,海洋酸化還元状態等の変化を示す(Lyons et al., 2014).これまでの研究により上記イベントの原因や当時の地球環境変化については比較的明らかとされているが,イベント後の地球環境については明らかでない.そこで本研究では,約19.6億年前の黒色頁岩を対象に有機炭素同位体比分析を行うことでLomagundi Event後の地球環境に関する検討を行ってきた.

本研究で分析試料としたのはカナダ・ケープスミス帯ポブングニチュク層群から掘削されたコア試料(4G8069, 718.3333)である.これら2本のコア試料は砂岩-黒色頁岩互層(4G8069;90m,718.3333;50m)より構成されており,互いに10kmほど離れた地域から掘削されている.先行研究により,コア試料に含まれる砂岩-黒色頁岩層序は約19.6億年前にスペリオルクラトンの大陸斜面で堆積したものであることが明らかになっている(St-Onge and Lucas, 1990).また,4G8069コア中の砂岩-黒色頁岩層序は直上のコマチアイト質の溶岩流のよって覆われている.718.3333コア試料は分析対象とした砂岩-黒色頁岩層序から約100m上部にコマチアイト質溶岩を含む.有機炭素同位体比の分析を行った黒色頁岩試料は,主成分鉱物として石英を含んでおり,副成分鉱物として白雲母,磁硫鉄鉱を含む.

4G8069コアにおいてδ13Corgは−32‰から−29‰の値をとり,大きく2度の変動をする(Carbon isotope excursions; CIEs).CIE1ではコア底部(−32.0‰)から約45mかけて−29.5‰まで徐々に上昇する.CIE2では約5mかけての同位体減少(−29.5‰から−32.1‰)後,約25mかけての同位体上昇(−32.1‰から−31.0‰)をする.同様のCIEは718.3333コアの分析からも確認できる.718.3333コアにおいて,δ13Corgは−30.6‰から−33.2‰まで約8mかけて減少した後,約40mかけて-31.9‰まで上昇する.

コマチアイト質溶岩を基準としてδ13Corgの対比を行うと4G8069コアにおけるCIE1と718.3333コアにおけるCIEは同時期のものであると考えられる.したがってLomagundi Event終了後,少なくとも2度のCIEsが起きた可能性がある.このCIEを引き起こす原因については火山活動の活発化と陸上黒色頁岩の酸化の2つの可能性が考えられる.

References

Lyons, TW, Reinhard, CT, and Planavsky, NJ 2014, The rise of oxygen in Earth’s early ocean and atmosphere: Nature, v. 506, p.307-315.

St-Onge, MR, and Lucas, SB, 1990, Evolution of the Cape Smith Belt: Early Proterozoic continental underthrusting, ophiolite obduction and thick-skinned folding. In The Early Proterozoic Trans-Hudson Orogen of North America, v. 37, p. 313-351.