JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)

[BCG06-P12] グリーンランド北西部中原生界Qaanaaq層堆積岩の有機質微化石群集

*原 勇貴1安藤 卓人3沢田 健2 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻、2.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3.島根大学 エスチュアリー研究センター)

キーワード:アクリターク、中原生代、パリノモルフ、グリーンランド

中原生界は火成活動による長期温暖環境でシアノバクテリア・藻類が繁茂したことが、グレンビル造山運動で形成された大規模なデルタ―海底扇状地システムの堆積物を用いた研究から示唆されている(Taira, 2007).。また分子生物学的な検討から提案された真核生物のビッグバン仮説 (Philippe and Adoutte, 1998)が起こったとされる時代に含まれ、バイオマーカーや化石記録から議論が行われている。この化石記録の一つとしてアクリタークが報告されている。アクリタークは酸・塩基不溶な抵抗性の有機高分子かなる有機質微化石(パリノモルフ)のうち、起源が不明な微化石の総称であり、多くは真核藻類の休眠胞子や胞子嚢だと考えられている。アクリタークは形態が多様化する古生代以降において生層序や古環境推定のプロキシとして利用されているものの、原生代における進化史や環境への応答についてはあまり明らかになっていない。

そこで本研究では、中原生界堆積岩の有機質微化石観察を行い、種を推定・同定して層準ごとに群集変動を比較した。分析試料はグリーンランド北西部・テューレ堆積盆のDundas層群Qaanaaq層の灰色頁岩を用い、HCl/HF処理によってケロジェン分離を行い顕微鏡で観察した。試料は、2018年および2019年の7~8月に北極域研究推進プロジェクト(ArCS)事業の一環として採取した。

パリノモルフ分析の結果、アクリターク8種類(Leiosphaeridia sp.・Synsphaeridium sp.・Satka sp.・Navifusa majensiSimia sp.・?Lophosphaeridium sp.・Schizofusa sp.・Tasmanites sp.)とフィラメント状微化石が観察された。全層準で最も多く観察されたLeiosphaeridia sp.は、上位 (若い年代) に向かうにつれて直径の分布が大きい方向に遷移する傾向が示された。Leiosphaeridia sp.はその単純な構造から、複数の分類群を含んでいる可能性があるばかりでなく,群体を形成する種類が堆積過程で破壊・単離したものを含む可能性が考えられているため (Samuelsson et al.,1999) 、今回の結果は巨大化に限らず種の混合・シフトの影響も示唆される。さらに細胞様構造の集合が特徴的であるSynsphaeridium sp.とSatka sp.を群体種とし、他の個体種7種との比率を算出した。その結果上位に向かうにつれて群体種の割合が増加する傾向が示され、多細胞真核生物への進化や巨大化を反映する可能性が示唆された。