JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG07] 顕生代の生物多様化:放散と絶滅

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)

[BCG07-03] 南中国のカンブリアステージ1(Fortunian)から産する最古節足動物体化石

*河野 聖那1磯崎 行雄1佐藤 友彦2張 興亮3劉 偉3 (1.東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系、2.東京工業大学理学院地球惑星科学系、3.西北大学,中国)

キーワード:カンブリア紀、Fortunian、最古、節足動物、SSF、澄江

節足動物の体化石で最古例は,中国雲南省産のカンブリア紀前期(5億1700万年前)の澄江動物群に含まれる三葉虫やKunmingellaなどである.それらよりも古いカンブリア紀最初期のsmall shelly fossils (SSFs)から節足動物は発見されていない.南中国雲南省東部澄江地域の洪家沖セクションにおいて,最下部カンブリア系の詳細な岩相およびSSF層序の検討を行なった結果,新たに二種類の二枚殻を有する節足動物化石を発見した.これらは下部カンブリア系中誼村部層中で識別された5つのSSF群集帯の最下位(Anabarites trisulcatus-Protohertzina anabaricaAssemblage Zone)と下から二番目(Paragrobolilus subglobosus-Purella squamulosaAssemblage Zone)との間の層準から産する.小型節足動物はいずれも二枚殻を有する.一つのグループは二個体認められ,体長約0.4 mm,非対称,subtriangular,背側縁は直線状,腹側および前縁と後縁はゆるく外側へ湾曲.殻表面に網目状の装飾があり,前後は二つのセグメントに分かれている.もう一方のグループは長さ約1.7 mm,左右対称,外形は横に長軸をもつ楕円形の下半分,表面は滑らか,装飾はない.前者のグループについてはその大きさや外形,網目状の装飾や二つのセグメントに分かれる点など多くの点で貝形虫の形態的特徴によく一致する.貝形虫の産出は古生代から現世まで知られており,これまでの最古例は最下部オルドビス紀(Tremadocian)のものである.一方,後者のグループは大きさや外形などにおいてBradoriidに類似するが,多くのBradoriidが持つlobeを欠く.Bradoriidの最古例はカンブリア紀前期(Age 3)である.本研究結果で,最古の節足動物の体化石をカンブリアのステージ1(Fortunian)から見出したことは,その出現が従来の記録よりおよそ1800万年古かったことを実証した.