JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG07] 顕生代の生物多様化:放散と絶滅

コンビーナ:磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)

[BCG07-P04] 岐阜県高山市福地地域から産するデボン紀貝形虫化石

*原島 舞1上松 佐知子1 (1.筑波大学)

キーワード:デボン紀、飛騨外縁帯、福地層、貝形虫化石、古生物地理

貝形虫はオルドビス紀から現在に至るまで生息している生物であり,多様な水域に棲み分けを行っていることから,古環境解析に重要な役割を持つ.古生代の貝形虫は,主に底生で分散の範囲が狭いことから,古地理の再構築にも利用される.日本においては新生代貝形虫についての研究は盛んであるが,古生代については研究例が少ない.したがって,本研究では日本における古生代貝形虫化石のデータ数を増やすことを目的として,飛騨外縁帯下部デボン系福地層の下部石灰岩部層から貝形虫化石の抽出を行った.同時に,岩相と貝形虫化石に基づいて古環境の推定および古生物地理の検討も行った.
福地層は岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地地域に分布する.調査は福地山東側山麓の福地山登山道と化石遊歩道にて行い,化石を豊富に含む黒色層状石灰岩と灰色塊状石灰岩を主体とした岩相が露出している.これらの石灰岩は薄片観察の結果から,Coral rudstone,Bioclastic pack / wackestone,Micrite,Pelodal grainstone に分けられる.また,少量であるが石英が確認されたことから,大陸縁辺の環境で堆積した可能性が高いと考えられる.よって,福地層の堆積場は大陸縁辺に位置するサンゴ礁近傍の浅海域であると推定される.貝形虫化石は,Hot-acetolysis 法を用いて石灰岩から単離を行った.19 試料中10 試料から貝形虫化石を拾い出したが,その多くは結晶化により殻の保存状態が悪い.そのため,殻の表面装飾が残っている個体や合弁で保存されている個体が比較的多い5 試料から,15 属11 種 計486 個体を同定した.産出した個体のうち,約47% がPalaeocopida目,約42% がPodocopida 目であり,外浜~沖浜の浅海群集を示す.また,他地域との化石種の比較を行ったところ,福地層から産出した種は南中国やロシアから産出報告のある種であり,堆積場が近かったことが示唆される.しかしながら,北中国の下部デボン系の貝形虫化石データが不足しているため,時代・地域を変えて検討を続ける必要がある.