JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

[G03-02] 空間把握を確実に理解させる一方法

*青木 邦勲1 (1.日本大学豊山高等学校・中学校)

キーワード:空間把握、世界地図

2年前の発表において、中学校の地理の授業で生徒に徹底すべきことは「紙の世界地図において位置・場所・地域の正確な空間把握ができているか?」という発表をした。Google Earthなどのツールを使えば生徒の理解を助けられるとのご指摘を頂いたが、今回の発表は空間把握の理解に限定して、世界地図の中で前述のような作業が生徒の実力でできるようにする試みを述べる。

 前半は空間把握に苦しむ生徒の現状を述べる。Google Earthで位置を見せると生徒はその通りに作業を行う。Google Earthは位置の表示に失敗しないので、生徒は何回もGoogle Earthの動画を見ながら紙に描かれた世界地図で場所を探す。しかし、紙の地図で作業するときに、Google Earthと同じ軌跡しかたどることが出来ず、東経から西経、もしくは、西経から東経に移動できない生徒が増えている。というのは、平面で描かれた地図を見ると大西洋で位置をたどるのが止まってしまうのだ。つまり、球体の地球と平面の世界地図を異なった世界観として考えてしまう。その場合には紙の世界地図を円筒にするのだが、そうなると緯度が異なっても任意の緯度1周の距離は全て同じといったように実際の球体と矛盾する発言が出てくる。

 後半はこれらの現状にどのように対処すべきか、現状を通して対策を述べる。正しい空間把握、正しい世界観を理解させるには、世界の地理を学習しながら図法について学習させる。図法の内容を単体で学習するのではなく、世界の地理を学習しながら図法の説明をする方が空間把握を理解が進むことが分かった。私は、生徒が正しい空間把握をすることによって地理総合の前提としている「中学校の充実した地誌学習」ができるものと考えている。

 最後に発達障害ではないかと考えられる生徒に対して、私が行っている対策を述べる。休み時間にその生徒を呼び、授業で行った作業と全く同じ作業を行わせる。ここで大切なのは、手順が授業と異なってはいけないこと、時間を気にして教員が手を出さないことである。中学生はできたことは理解する喜びにつなげるので、これを大切にして繰り返し同じことをさせる。

 研究発表は高いレベルの研究を行い、いかに成果を出したのか、ということが評価の対象になると考えるが、近年は生徒の様子が多様化しているために一様にレベルの高い学習・授業ができる状況ではなくなってきている。このことに対してどのように対応すべきか、どのようにして知識を定着化させて実力をつけさせていくべきか、ということについても議論されるべきではないかと私は考える。