JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

[G03-P09] Raspberry Piと加速度センサで学ぶ雑微動解析

*麻生 尚文1柴田 律也1中島 淳一1 (1.東京工業大学)

キーワード:地震学、Raspberry PI、加速度センサー

地震学で解析する地震波は、地震による波にとどまらない。主に潮汐力による海洋起源のノイズにより、地表は常に揺れている。こうした雑微動の解析は、地震の少ない地域でも地下構造の推定ができるため、注目を浴びている。地震の波を調べる古典的な地震学だけでなく、広義の地震波を解析することで地球惑星現象の解明を目指す地震学のフロンティアを理科教育に取り組むための教材開発を行った。
具体的には、小型の加速度センサーを地震計と見なし、小型のコンピュータRaspberry Piに接続することで、雑微動解析を体験しながら理解できるような教材の開発を行った。3次元加速度センサーLIS3DHを用い、SPI規格のシリアル通信によってRaspberry Piへ時々刻々の加速度センサー値を送信する。Raspberry Piでは、センサー間における過去5秒間の地震波形の相互相関関数を1秒毎に計算する。相対走時差に地震波速度を掛け合わせることで、相対距離差を横軸とした振動エネルギー源の位置分布を得る。この分布をRaspberry Piに接続したLEDに表示することで、液晶画面を必要とせずに、スタンドアロンでリアルタイムの震動源を表示することもできる。現在はシステムおよびプログラムの簡略化のため、2次元での開発を行ったが、発展課題として、3次元への拡張も可能である。
本ツールは、上記のように、地震波速度を仮定して震動源を特定することができるが、一方で、特定の既知の震動源を与えることで、地震波速度を推定することもできる。雑微動解析やバックプロジェクションといった地震学のフロンティアで用いられている手法の学習に最適であるだけでなく、プログラミングや電子工作の学習にも活用が期待される。
2020年3月に東京工業大学で開催されるアウトリーチイベント「揺らして遊ぼう!地震学教室」では、本ツールを用いて地震学のフロンティアを中学生・高校生に伝える。その際には、地震現象として注目されている、スロー地震への理解を深められるような、「スロー地震データベース」を用いた地震活動解析実例も紹介する。