JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

コンビーナ:小森 次郎(帝京平成大学)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

[G04-05] 新学習指導要領「探究学習」のダイバーシティ構想~「子ども」×「研究者」マッチングが生み出す最先端科学への探究心~

*五島 朋子1向 雅生2長濱 和代3石田 秀輝4 (1.東京大学地震研究所、2.東京都立富士高等学校附属中学校、3.目白大学、4.東北大学)

キーワード:探究学習、新学習指導要領、環境探究学、オープンサイエンス

アメリカでは2007年より国家戦略として実施されているSTEM教育が導入されており、課題解決型学習として未来型の人材育成に大きな効果があると考えられている。日本においても2020年に高等学校教育で「探究」に関する授業の導入が決定しており(文部科学省高等学校指導要領告示)、今後はその影響が少なからず小中学校の教育活動へも影響が及ぶことが予想される。しかしながら、教員自身の専門性は限られているので、探究学習の教材探しや指導に苦慮することが予想され、子どもたちが自発的に研究題材を決めたところでそれを指導できる多角的視点と専門性を持ち合わせない場合が多い。そこで、私たちは「環境探究学」(Environmental Project-based Research)の中で「研究者」と「子ども」の研究題材のマッチングを行い、研究者から直接指導を仰ぎながら子どもたちが主体的に研究活動を行うことのできる環境を構築しようと試みている。例えば、生物物理学を学生時代に専攻していた中学校教員は、自身の土俵で勝負しようと、X線分析顕微鏡(XGT)を用いて生徒に人気のある甲虫に蓄積する金属元素を測定させ、研究大会への発表と論文化を実現した(堀越ほか,2019:X線分析の進歩)。また、「防災探究」という指導要領にはないカテゴリーを独自に設け、災害科学に関する知識の教授と探究学習を融合する出前授業を実施した(五島ほか,2020:環境探究学研究会ニュースレター)。ここで、研究者による出前授業を探究活動の学習フレームワークに取り込む際には、研究者が何らかの形で「評価」まで関与することが望ましいことがわかった。例えば、PC×Rサイクル(東京都教育員会開発委員会)をもとにコモンルーブリックと評価シートを用いることが有効である(向ほか,2020:日本生物教育学会)。このように、最先端科学に従事する「研究者」と「子ども」を繋げるシステムは、日々多忙な教員の教材研究の効率化を図ることができる。“すでにあるものを利用する”というオープンサイエンスの考え方の下、最先端の研究を市民科学レベルで取り入れることができるモデルケースでもある。子どもたちの探究の芽を教員の力量で摘み取ることがないよう、最先端で活躍する研究者の協力を今後益々仰げればと考える。文理の別を問わず、「子ども」「教員」「研究者」の垣根を超えた融合的なダイバーシティ学習の取り組みは、未知なるワクワク感に満ち溢れた子どもたちの輝かしい探究心の芽生えを支える。