JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 景観評価の国際比較

コンビーナ:青木 陽二(放送大学)

[HCG21-04] 日本庭園の景観形成手法についての考察

★招待講演

*菊池 正芳1 (1.公益財団法人東京都公園協会)

キーワード:日本庭園の景観形成、借景、縮景、大名庭園

日本庭園は、時代の移り変りと共にその時代の社会、文化の影響を受けてその形式を変化させてきた。貴族の住む神殿に島のある池とそこに流れ込む流れのある寝殿造り庭園。仏教の浄土思想の影響を受け、極楽浄土を再現しようとして寺院の前に広々とした池を中心とした浄土式庭園。水を使うことなく石と砂で流れや大海を表現する枯山。水室内からの限られた視線の方向と範囲の中に池や中島等を配置して日本の名所などを表した書院造庭園。

従来の庭園様式を取り入れた総合的な庭園様式として江戸時代に多く出現してきたのが、池を中心として、その周囲を散策し移り行く景色の変化を眺め楽しむ池泉回遊式庭園いわゆる大名庭園である。

時代の変化に伴い日本庭園もその時代を反映した庭園様式を作り上げてきた。しかし、一貫して変わらないことは自然の風景を取り入れた、自然の風景を映しこんだ庭園となっているということである。日本庭園と一概に言ってもいくつかの形式があるが、庭園の中に自然の風景を写し取った庭園様式が日本庭園の特徴であるとも言える。そこで今回は、自然風景を庭園内にどのようにして再現しているのかについて、日本庭園の様々な形式を取り入れた総合庭園様式ともいえる大名庭園を事例として、日本庭園における景観形成の手法について考察する。

日本庭園の景観形成手法としては次の三つが主な庭園技術と考えられている。先ず一つ目は宿景である。これは、樹木が大木であるかのような姿を残しつつ小さく形作る剪定の技術や、遠近法を駆使して目指す美しい風景を庭園内に再現する手法である。二つ目は借景である。これは、遠くに存在する山や森の景色を庭園内に取り込むことで、庭園の景色と背景となる自然の風景を一体化させて庭園の景観を形成する手法である。三つめが見立てである。庭園内の小山や石組、樹木などを他の物になぞらえて庭園の景観を構成する手法である。日本庭園は主にこれらの技術を活用して庭園内の景観を作り上げている。

今回は、実際の日本庭園がどのような技術により景観を形成しているのか、大名庭園である、国指定の特別史跡特別名勝の小石川後楽園と国指定特別名勝の六義園を事例として検証してみることとする。