[HCG23-09] 中央ネパール・カリガンダキ川における川砂の重鉱物構成とベンガルファンにおけるその応用
キーワード:中新世、ヒマラヤ、ベンガルファン
ベンガルファンはヒマラヤ山脈の形成に伴い形成された世界最大の海底扇状地である.そのため,堆積物は主にヒマラヤ山脈やチベット高原南部からの砕屑物で占められている.そこで,ヒマラヤ山脈の各地質体が生産する砕屑粒子について検討し,その結果をベンガルファンの堆積物に適用してヒマラヤ山脈の発達史を考察した.
中央ネパールに位置するカリガンダキ川は,テチスヒマラヤ帯に源を発し,高ヒマラヤ・低ヒマラヤ帯・シワリク帯を横切り,ガンダキ川(あるいはナラヤニ川)としてガンジス川に合流する.今回,この河川に沿って川砂の採取を行い,それぞれの地質体が生産する砕屑物,特に砕屑性重鉱物について検討した.河川砂試料はカリガンダキ川上流域~中流域の,テチスヒマラヤ・高ヒマラヤ・MCTゾーン・低ヒマラヤ帯を横断するルートから採集し,重液を用いて重鉱物を分離した.重鉱物の同定は主に電子マイクロプローブを用いて行い,アルミノケイ酸塩については偏光顕微鏡を用いた.また,砕屑性ザクロ石や砕屑性角閃石についてはその化学組成を求めた.その結果,それぞれの地帯において以下の特徴が明らかとなった.
テチスヒマラヤ帯:磁鉄鉱などの不透明鉱物が卓越するが,電気石,ルチルが普遍的に含まれる.
高ヒマラヤ帯:Colchen et al. (1986)におけるFormation Iの流域では,普通角閃石やパーガス閃石などの角閃石,単斜輝石が卓越し,藍晶石,ザクロ石がこれに次ぐ.ザクロ石はパイロープ成分を15 mol%以上含むアルマンディンが多い.Formation II, IIIの流域では角閃石が卓越し,単斜輝石がこれに続く.斜方輝石,ザクロ石は極めてわずかである.ザクロ石はパイロープ成分を0-15 mol%含むアルマンディンが多く,グランダイト成分を5-20 mol%程度含むことがある.
MCTゾーン:ザクロ石が卓越し,普通角閃石,単斜輝石が続く.電気石や緑れん石,燐灰石,イルメナイト,チタン石,ルチルなどが含まれる.ザクロ石の組成は多様であり,パイロープ成分を20 mol%以上含むものも認められる.
低ヒマラヤ帯:電気石,ルチル,ジルコンが卓越し,チタン石,アクチノ閃石,パーガス閃石も認められる.ザクロ石はほとんど含まれない.
これらの結果をベンガルファンの砕屑物に適用した.IODP 354次航海でのU1451コアから得られた砂質堆積物の重鉱物の特徴や砕屑性ざくろ石の化学組成(Yoshida & Rai, 2019)と比較した.ベンガルファン堆積物では下部中新統(17 Ma)ではパイロープ成分に富むザクロ石や珪線石,藍晶石,十字石,クロリトイドなどを含む堆積物が見いだされている.一方,普通角閃石などの角閃石は中部中新統(16 Ma)より上位で,普通輝石は上部中新統~更新統に普遍的に含まれるが,ヒマラヤの各地帯が生産する重鉱物の組み合わせとベンガルファン堆積物におけるそれとは必ずしも良い一致を示さない.砕屑性藍晶石等の存在は,前期中新世での高ヒマラヤ帯の露出を示すが,普遍的にパイロープ成分に富むザクロ石が出現するのは9.2 Ma以降である.従って,中新世初期以前,および中新世中期,さらには第四紀にわたる複数回の高ヒマラヤ帯の上昇や地域的に異なる上昇運動があったと考えられる.
【引用文献】
Colchen, M. et al. (1986) Geological map of Annapurnas-Manaslu-Ganesh Himalaya of Nepal.
Yoshida, K. & Rai, L.K. (2019) Abstract volume of 34th Himalaya-Karakorum-Tibet Workshop, Bozeman, USA.
中央ネパールに位置するカリガンダキ川は,テチスヒマラヤ帯に源を発し,高ヒマラヤ・低ヒマラヤ帯・シワリク帯を横切り,ガンダキ川(あるいはナラヤニ川)としてガンジス川に合流する.今回,この河川に沿って川砂の採取を行い,それぞれの地質体が生産する砕屑物,特に砕屑性重鉱物について検討した.河川砂試料はカリガンダキ川上流域~中流域の,テチスヒマラヤ・高ヒマラヤ・MCTゾーン・低ヒマラヤ帯を横断するルートから採集し,重液を用いて重鉱物を分離した.重鉱物の同定は主に電子マイクロプローブを用いて行い,アルミノケイ酸塩については偏光顕微鏡を用いた.また,砕屑性ザクロ石や砕屑性角閃石についてはその化学組成を求めた.その結果,それぞれの地帯において以下の特徴が明らかとなった.
テチスヒマラヤ帯:磁鉄鉱などの不透明鉱物が卓越するが,電気石,ルチルが普遍的に含まれる.
高ヒマラヤ帯:Colchen et al. (1986)におけるFormation Iの流域では,普通角閃石やパーガス閃石などの角閃石,単斜輝石が卓越し,藍晶石,ザクロ石がこれに次ぐ.ザクロ石はパイロープ成分を15 mol%以上含むアルマンディンが多い.Formation II, IIIの流域では角閃石が卓越し,単斜輝石がこれに続く.斜方輝石,ザクロ石は極めてわずかである.ザクロ石はパイロープ成分を0-15 mol%含むアルマンディンが多く,グランダイト成分を5-20 mol%程度含むことがある.
MCTゾーン:ザクロ石が卓越し,普通角閃石,単斜輝石が続く.電気石や緑れん石,燐灰石,イルメナイト,チタン石,ルチルなどが含まれる.ザクロ石の組成は多様であり,パイロープ成分を20 mol%以上含むものも認められる.
低ヒマラヤ帯:電気石,ルチル,ジルコンが卓越し,チタン石,アクチノ閃石,パーガス閃石も認められる.ザクロ石はほとんど含まれない.
これらの結果をベンガルファンの砕屑物に適用した.IODP 354次航海でのU1451コアから得られた砂質堆積物の重鉱物の特徴や砕屑性ざくろ石の化学組成(Yoshida & Rai, 2019)と比較した.ベンガルファン堆積物では下部中新統(17 Ma)ではパイロープ成分に富むザクロ石や珪線石,藍晶石,十字石,クロリトイドなどを含む堆積物が見いだされている.一方,普通角閃石などの角閃石は中部中新統(16 Ma)より上位で,普通輝石は上部中新統~更新統に普遍的に含まれるが,ヒマラヤの各地帯が生産する重鉱物の組み合わせとベンガルファン堆積物におけるそれとは必ずしも良い一致を示さない.砕屑性藍晶石等の存在は,前期中新世での高ヒマラヤ帯の露出を示すが,普遍的にパイロープ成分に富むザクロ石が出現するのは9.2 Ma以降である.従って,中新世初期以前,および中新世中期,さらには第四紀にわたる複数回の高ヒマラヤ帯の上昇や地域的に異なる上昇運動があったと考えられる.
【引用文献】
Colchen, M. et al. (1986) Geological map of Annapurnas-Manaslu-Ganesh Himalaya of Nepal.
Yoshida, K. & Rai, L.K. (2019) Abstract volume of 34th Himalaya-Karakorum-Tibet Workshop, Bozeman, USA.