JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、池田 昌之(東京大学)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)

[HCG23-P03] 青森県五所川原地域の海成段丘に分布する古土壌

*小俣 彩1吉田 孝紀2 (1.信州大学大学院総合理工学研究科、2.信州大学理学部理学科地球学コース)

キーワード:古土壌、古気候、最終間氷期、海成段丘

赤色土は亜熱帯森林環境において形成されるため,古赤色土の存在は過去の温暖な気候条件を示唆するものとなる.かつて松井・加藤(1962)は九州から本州北端にかけての広い範囲で古赤色土の存在を報告し,その意義を論じた.中でも,本州北端に位置する津軽半島の古赤色土の存在は,過去の温暖な気候条件の広がりを議論する上で重要である.
津軽山地のふもとには最終間氷期に形成された海岸段丘面が広く発達する(吾妻,1995).本研究では,青森県五所川原市飯詰から北津軽郡中泊町中里に分布する段丘面を対象とし,その中に位置する古土壌層について検討を行った.野外調査にあたってはマンセル式土色名により土色を記載し,堆積物の岩相を記載した.
その結果,調査地域の堆積環境を河川チャネル環境,河川氾濫原環境,湖沼環境と判断した.本調査地域の湖沼環境は河川氾濫原環境の上部および河川チャネル環境の下部に位置することから,河川堆積相の一部を形成する湖沼であったと考えられる.また,本調査地域には7.5YRの褐色系の土層が主に分布し,1地点にのみ5YRの赤色土層が見られた.
室内においては,堆積相や土色の異なる層から採取した試料を用いて薄片観察を行った.clay fillingやclay coatingの土壌構造がよく発達する層が2地点で見いだされた.また,薄片観察により集積粘土の発達が見られた地層とその下位の層準で採取した試料についてXRD分析を行った.その結果,集積粘土が見られる試料ではハロイサイト,バーミキュライト,カオリナイトなどの粘土鉱物が含まれるのに対し,集積粘土が見られない試料に含まれる粘土鉱物はほとんどハロイサイトのみであった.集積粘土を含み,粘土鉱物に富むこれらの地層は一般的な土壌層序のB層に相当し,当時の成熟した土壌層の形成を示唆する.
本調査地域に分布する古土壌層のB層の土色は5YR4/8(赤褐),5YR5/8(明赤褐),7.5YR4/6(褐),7.5YR5/8(明褐)である.また,B層に含まれる粘土鉱物組成はハロイサイトおよびバーミキュライトを主体とすることから,現在の赤黄色土に類似する.
本研究により,津軽半島において最終間氷期に形成された段丘面には赤黄色土からなる古土壌が発達していたことが明らかになった.現在の赤黄色土は亜熱帯森林下で生成するため,当時の津軽半島の気候は非常に温暖であったと考えられる.

引用文献
吾妻崇 (1995) 変動地形からみた津軽半島の地形発達史.第四紀研究,34,75~89.
松井健・加藤芳朗 (1962) 日本の赤色土壌の生成時期・生成環境にかんする二,三の考察.第四紀研究,2,161~179.