JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-06] 沿岸部の地層処分における概念モデルを用いた広域地下水流動解析

*羽根 幸司1田部井 和人1升元 一彦1森川 誠司1古林 慧一2天野 大和2丸井 敦尚3 (1.鹿島建設株式会社、2.株式会社地層科学研究所、3.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

キーワード:沿岸部、地層処分、地下水流動、概念モデル

地層処分事業における文献調査段階では、地下・地質に関する利用可能なデータが限られていることなどから、地下水流動評価結果には振れ幅が生じることが避けられない。概要調査段階に向けた効果的な調査計画立案のためには、どのようなデータを取得すればこの振れ幅の低減が可能かを解析的に把握しておくことが望ましい。このような観点から、筆者らは、幌延地点を対象として概念モデルを作成し(別報参照)、これを用いた広域地下水流動解析を試行的に実施した。
 概念モデルの領域としては、換気に係る海底の坑道延長の限度をふまえた処分施設の設置可能範囲を考慮し、海岸線を中央に海側20km、陸側20kmを包括する40km×40kmの矩形モデルをまず作成した(モデル1)。また、これに海水準変動による海退を考慮して海側へモデルを延長した40km×100kmの矩形モデルを作成し(モデル2)、さらに、河川や地形等による水文学的な境界条件を考慮して解析領域の取り方を修正した(モデル3)。モデル1~3を用いて解析モデル領域の設定方法に関する予備的な検討を行ったのち、モデル3を用いて解析物性値(透水性)のばらつきに着目した感度解析を実施した。解析物性値の設定にあたり、実際の文献調査においては当該サイトの水理地質構造区分や地層毎の物性値が明確に把握されていない状況にあることを想定し、本検討では幌延の水理地質構造を第四紀堆積岩類、新第三紀堆積岩類、白亜紀堆積岩類および断層に分類し、それぞれの物性値は全国各地の実測データを統計処理した値を参考に設定した。
 解析モデル領域の設定方法に関する予備的な検討の結果、最海退時の地下水流動場を適切に評価するためには40km×40kmのモデル1では不十分であり、より広い領域をとる必要があることが判った。また、矩形領域としたモデル2と水文的な境界を考慮したモデル3では解析結果が大きく変わらないことを確認した。透水係数の感度解析の結果、深度数百m、海岸線~約10km程度における地下水流速場は新第三紀堆積層の透水係数のばらつきによる影響が大きいことが判明し、冒頭述べた観点からはこの層の透水性を調査する重要性が高いことが示唆された。