JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-07] 拡散場の評価方法の検討 -幌延地区での事例研究-

*長谷川 琢磨1中田 弘太郎1 (1.一般財団法人 電力中央研究所 )

キーワード:化石海水、拡散支配、同位体分別

地下水流動が非常に遅い場合、物質は拡散で輸送される。拡散は最も遅い輸送形態であり、拡散が支配的な場は拡散場とよばれ、放射性廃棄物処分において適した条件と考えられる。化石海水が残留しているような低透水の地層では、拡散場が成立している可能性が高い。

この拡散場を評価するには、拡散によって分離・分別する成分を利用するのが有望と考えられる。化石海水は降水に比べて、高いδDと高いCl濃度を持つ特徴がある。δDとClとは、拡散係数が異なるため、化石海水と降水が接触し、拡散が発生すると分離して、異なる分布を形成する。また、35Clと37Cl はClの主要な同位体であるが、これらは質量数が異なるため拡散係数がやや異なり、拡散で同位体比が変化することが知られている。

幌延地区において、このδD、ClとClの同位体比を調べたところ、ClとδDの分離とCl同位体比(δ37Cl)の変化が確認された。このため、輸送において拡散が支配的と考えられた。ただし、理論的な検討結果から、化石海水の浅部に降水が浸入した後に、化石海水が拡散で拡がり、分離・分別が発生しているように推定された。このため、分離・分別の評価には、地質的な履歴も含め今後検討が必要であると考えられた。

本研究は、経済産業省からの受託研究「令和元年度 岩盤地下水流動評価技術高度化開発」として実施したものである。なお、データの一部は日本原子力研究開発機構から提供していただいた。ここに記して謝意を表します。