JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-P02] 高レベル放射性廃棄物地層処分に係る自然現象の事例研究から影響評価までの体系化の検討

*川村 淳1石丸 恒存1丹羽 正和1小松 哲也1 (1.日本原子力研究開発機構)

キーワード:高レベル放射性廃棄物地層処分、自然現象、地質環境、影響評価モデル・シナリオ、論証ダイヤグラム

地層処分に適した地質環境の選定に関しては、現在発生している自然現象の活動性の評価だけでなく、処分後の将来数万年を超える長期にわたる自然現象の発生や変遷の予測、及び、それに起因する地質環境条件への影響を適切に評価する必要がある。適切な影響評価を実施するためには影響評価モデルやシナリオを構築して実施するが、それらの信頼性の確保のためには、それらの妥当性などについて事例研究の成果情報に基づき、科学的に納得できるような根拠を明示する必要がある。
ある課題を論証するための手法として、課題に対する論証・反証を繰り返しながら論拠を提示する討論ダイヤグラムに基づく手法が提示されている(大澤,2010)。ここでは、その討論ダイヤグラムを参考に簡略化し、根拠に対してさらに補強の根拠を論述する形式のいわゆる「論証ダイヤグラム」としての整理を試みた。
本検討では試行として、発端となる「課題」として「自然現象について科学的に確からしい影響評価をすることができる」を設定した。我々はその課題に対して「何を明示する必要があるか」について論議し、その結果として「現象理解」、「事象の顕著な場所/そうでない場所の検討」、「将来予測、その条件の検討」、「地質環境への影響の検討」、「地質環境への影響の概念モデル化」及び「検討すべきシナリオの抽出」のカテゴリーを設定した。そののち、それぞれについて何を論拠して提示すべきか、そのために必要な情報や参照先等について討論し、構造的な整理を試行した。
その結果、設定した課題に対して、必要な自然現象や地質環境条件に関する研究内容や成果情報が明確にでき、影響評価に資するための概念モデルやシナリオ構築のための成果情報の流れを明示できる見通しを得た。また、自然現象の研究成果から蓋然性が高いことが論証可能な概念モデルの構築が可能であるため、概念モデルに基づいて構築される評価シナリオの妥当性や重要性についても客観的な判定が可能となる見通しを得た。
本検討は、自然現象の研究者にとっては自身の研究内容の地層処分事業での位置づけや研究成果の反映先などを理解することが容易になり、影響評価の優先順位などの検討に資するものになるであろう。今回は具体的な場所が定まっていないジェネリックな検討であるが、具体的な場所について検討される場合においても、その場所に応じた研究項目の設定や影響評価の検討に資するものになるであろう。
【謝辞】本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部を利用した。
【引用】大澤(2010):日本情報経営学会誌,Vol.31,No.2,pp.66-78.