JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-P03] 隆起・沈降境界域での地殻変動の推定技術の高度化に向けた検討:関東平野北部の事例

*中西 利典1小松 哲也1本郷 美佐緒2野口 真利江3宮本 樹4木森 大我4須貝 俊彦4 (1.日本原子力研究開発機構、2.アルプス調査所、3.パレオ・ラボ、4.東京大学)

キーワード:海水準変動、地殻変動、編年、第四紀後期、関東平野

隆起・沈降の影響が小さい沿岸平野では氷河性海水準変動に伴う地形や地層の痕跡が累積しづらいため、地殻変動様式を評価する際には、周辺の海成段丘面の分布様式やボーリング調査結果について総合的に検討して推定する必要がある。そうした既存情報が少ない地域では、評価基準が曖昧で不確定性が大きくなってしまう問題がある。そこで、上記の課題の不確定性を定量的に検証するために、これまで既存データが少ない関東平野北部(Tajikara, 2000;須貝ほか、2013)を事例地域として下記の研究開発を実施した。海洋酸素同位体ステージ(Marine Isotope Stage: MIS)の時空間分布の認定を目的として、鬼怒川低地帯南部の宝木台地(MIS 4に離水した河成段丘; 貝塚ほか編, 2000)において、ボーリングコア掘削を3か所で実施した。それらは上流からGC-OY-2、GC-OY-1及びGC-NG-1の順で下流に向けて配置しており、孔口標高は34.0 m、29.5 m、20.6 m、掘進長は86.0 m、90.0 m、74.6 mである。それらのコアを用いて岩相観察、珪藻および花粉の群集組成解析、テフラ分析を実施した。ボーリングコアは陸域から海域にかけての様々な堆積環境で形成された更新統によって主に構成されている。その上位はローム層に遷移しており、最上流部のGC-OY-2コアの深度79.43 m以深では激しく変質を受けた泥層(上総層群)が分布している。また、3本のコアにはガラス質な火山灰層や軽石層、スコリア層が数多く確認された。深度90 m以浅の更新統は、海浜相、上部外浜相、下部外浜相、内湾相、蛇行河川相及び網状河川相に区分された。珪藻および花粉分析の結果、MIS5eに相当する高海水準期の内湾堆積物やMIS11に対応するコナラ属アカガシ亜属の優勢層が確認された。これらに対比される地層は関東平野中部(中澤・遠藤,2000;中澤・田辺,2011;納谷・安原,2014)においても多く確認されているので、それらの分布様式と堆積環境を検討することによって隆起・沈降境界域における地殻変動の推定手法の構築を目指す。なお、本研究は東京大学との共同研究で実施されており、MIS5以降の地形発達(木森ほか,2020)やMIS6以前の海水準変動(宮本ほか,2020)も今学会にて発表されている。本講演と合わせてご議論して頂けると幸いです。


謝辞:ボーリング調査は株式会社地圏総合コンサルタントに実施していただいた。本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30-31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地層環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。


引用文献:

貝塚爽平, 小池一之, 遠藤邦彦, 山崎晴雄, 鈴木毅彦編, 日本の地形4 関東・伊豆小笠原, 東京大学出版会, 349p, 2000.

木森大我, 須貝俊彦, 宮本 樹, 小松哲也, 中西利典,関東平野中北部・宝木台地における最終間氷期以降の地形発達史, JpGU – AGU Joint Meeting, H-QR06 Session, 2020.

宮本 樹, 須貝俊彦, 木森大我, 小松哲也, 中西利典, 複数のボーリングコアの堆積層解析に基づく古東京湾のMIS6から最終間氷期の地形発達史, JpGU – AGU Joint Meeting, H-QR06 Session, 2020.

中澤 努, 遠藤秀典, 関東平野中央部大宮・野田地域地下浅部の更新統堆積シーケンスと構造運動, 堆積学研究, vol.51, pp.23-38, 2000.

中澤 努, 田辺 晋, 野田地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産業技術総合研究所, 72p, 2011.

納谷友規, 安原正也, 鴻巣地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産業技術総合研究所, 82p, 2014.

須貝俊彦, 松島(大上)紘子, 水野清秀, 過去40万年間の関東平野の地形発達, 地学雑誌, vol.122, pp.921-948, 2013.

Tajikara, M., Late Quaternary crustal movement around Kanto mountains, Japan, Proceedings of the Hokudan International Symposium and School on Active Faulting - Active Fault Research for the New Millennium –, pp.503-505, 2000.